×

ニュース

小頭症被爆者たち「戦争なくなって」 川下さん 国際会議で声上げる

 原爆小頭症の被爆者たちが、核兵器廃絶に向けて国際会議の場で声を上げた。核兵器禁止条約第1回締約国会議があるオーストリア・ウィーンと広島市を結んだ19日のオンラインイベント。原爆投下から76年が過ぎ、母親の胎内で被爆した仲間が次々と亡くなる中、核兵器の被害者を二度と出さないよう訴えた。

 中区の原爆ドーム前から参加した川下ヒロエさん(76)=東区=は爆心地から約1キロにいた母親の胎内で妊娠初期に強い放射線を浴びた。「戦争が世の中からなくなってほしい。世界の人に聞いてほしい」。ウィーンに映像を届けるカメラに語りかけた。

 手には自身が描いた原爆ドームの絵。ドームの周りに黄色いハハコグサの花が咲く構図で、「この小さな花たちの命をけさないでね」と平和を願う詩も添えた。中継終了後、「核兵器を全世界からなくしてほしい」と話した。

 小頭症被爆者や家族でつくる「きのこ会」の長岡義夫会長(73)=安佐南区=は「核兵器は単に巨大な威力を持つ爆弾ではない。母親と胎児を傷つける核兵器がある世界に人類の未来はない」と強調した。

 1965年結成の「きのこ会」には、これまでに延べ25人の小頭症被爆者が在籍したが、この1年で2人が死去し、現在は13人。親は全員他界した。長岡さんは親亡き後、小頭症の兄博さん(76)=南区=の自宅に通って世話を続ける。「本人も親もつらい思いをしてきたが、事実を発信しなければ彼らはいなかったことになる。核兵器の非人道性を少しでも理解してほしい」と訴えた。(余村泰樹)

(2022年6月20日朝刊掲載)

年別アーカイブ