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2県6市の島根原発避難訓練 陸海空の課題 浮き彫り

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故に備え、島根県が鳥取県、両県6市などと10日に実施した原子力防災訓練。福島第1原発事故を受け昨年度に続き2回目となった原発30キロ圏外への住民避難では、移動手段の選択肢を広げようと陸、海、空路を使った。住民と防災担当者の声から、それぞれの避難手段の課題が明らかになった。

足りぬバス/天候頼み

■陸路

 午前8時半、JR境港駅(境港市)。一時集結所からバスで到着した同市外江町の住民21人は、2両編成の臨時列車に乗り込んだ。

 外江3区自治会長の浜武勝さん(69)は「(地震や津波など複合災害の場合)線路がふさがる可能性もある」と鉄道避難のリスクを指摘。鳥取県原子力安全対策課の担当者は「複合災害なら運行前の安全確認に時間がかかる」と話した。

 避難した全835人のうち約8割がバスを利用した。だが松江市の場合、人口約20万人に対し市内のバスは189台で、9503人分にとどまる。「バスは本当に用意されるのか」。同市からバスで奥出雲町に避難した主婦村上加代子さん(63)は漏らした。

■空路

 ヘリコプターでの避難は、昨年度に続き中止となった。強風で陸上自衛隊防府分屯地(防府市)からヘリが到着しなかったという。

 島根県原子力安全対策課の山崎功課長は「災害弱者を迅速に運べるのが強みだが、天候に左右される。出動できない場合、国はサポートする仕組みを」と求める。

 入院患者の搬送に、航空自衛隊美保基地(境港市)のC1輸送機が初めて使われた。だが、雷注意報を受けいったん離陸を見合わせた。鳥取空港(鳥取市)への出発は2時間15分ずれ込んだ。

■海路

 境港(境港市)では、市民99人が海上自衛隊舞鶴地方隊の艦船と、境海上保安部の巡視船への乗車体験をした。「今回はあくまで手順確認」と鳥取県の担当者。「船の手配や大型の船舶を接岸する場所の確保と周知」を課題に挙げた。

 両県によると、訓練に目立った混乱はなかった。ただ、住民からは「シナリオに沿った訓練なら当然」=出雲市の農業森脇敏雄さん(65)=との声も聞かれた。訓練後、出雲市の長岡秀人市長は「抜き打ちの訓練も必要かもしれない」と述べた。

(2013年11月12日朝刊掲載)

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