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連載・特集

緑地帯 丸古玲子 呉本こぼれ話⑦

 初代「呉本」をきっかけに、母校の呉宮原高へ毎年講師としてお招きいただく。「総合的な探究の時間」の枠内で、地元を探究するフィールドワークに出掛ける前の生徒たちを景気づけるのが私の担当だ。具体的には、「探究ってなんだろう」「呉はどんな町かな」「インタビューのやり方」など。初めの一歩だけにこれが難しい。

 とはいえ、自らを省みればいいだけとも言える。「呉のことを知りたいのですが、どこから、何を、調べたらいいですか?」と、呉市役所に突撃して私もスタートしている。そこをシェアしよう。

 一つ、知ることはトキメキ、一つ、知らないことは恥ずかしいことじゃない、一つ、本気で知りたい人に人は本気で教えてくれる。また、スマホのコピペは他人の探究報告であってあなたの探究ではない、という、現代らしいポイントもわかってきた。心を込めて伝えるのは、「聞き出すより、聞き取る」こと。私自身が長く人物取材をしてきて強く実感している。

 年度末には発表会を参観する。若い生徒らの目の付け所は大変におもしろく幅広い。市政の方々にもぜひ参考にしていただきたい。

 実は、縁あってある大学のゼミも手伝ったが、面喰(めんく)らった。いくらこちらが旧軍港都市であった歴史を見過ごさないで、と訴えたところで、出てきた研究テーマは「呉産の牡蠣(かき)」や「とびしま海道の観光」だったから。はあ⁉ と魂消(たまげ)たが、発表をよくよく聞けば非常に感心させられた。固定観念にとらわれていたのは私のほうだったらしい。大人こそ気づき、若い力にもっと頼らねばもったいない。(ライター=呉市出身)

(2022年6月18日朝刊掲載)

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