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原爆ドーム 川底にバルコニーの手すり

■編集委員 西本雅実

 世界遺産である原爆ドームの前身、旧広島県産業奨励館のバルコニーにあった手すり2本などが、そばを流れる広島市中区の元安川左岸に眠っていることが分かった。原爆資料館などの求めに応じて19日、被爆石に詳しい東京大の田賀井篤平名誉教授(66)が訪れ、加工された4点の花こう岩を確認した。国土交通省太田川河川事務所は「貴重な文化財として放置できない」と、ドームを管理する市と扱いを協議する考えを示した。

 ドーム正面から元安川に下りる階段下の北側で干潮になると見ることができる。手すりの1本はほぼ完全な形で残り、長さは70センチで、飾りが施された上部は縦26センチ、横37センチ。容積から重さは推計270キロ。もう1本は下半分が欠けていた。溝を掘った同じ材質の花こう岩が近くで少なくとも2点確認できた。

 バルコニーは旧県産業奨励館の正面5階に位置し、手すりは21本。ドームを撮り続けた故佐々木雄一郎さんの写真で検証すると、原爆が投下された1945年の秋の写真でバルコニーは崩壊し、飾り付きの手すりは南側に1本だけが残った。落下した石材は周辺に散乱していたが、49年にはほぼ撤去されたのが分かる。南側の手すりは67年の第1回保存工事で補強され、残っている。

 太田川河川事務所は87年にドーム前の護岸整備を行った際、水を抜いて川底を約1メートル掘ったが、加工された石材が見つかった記録はないという。「護岸工事以降、ドーム内から投げ込まれたとはとても考えられず、近くで洪水も起きていない。なぜ現れたのか思いつかない」としている。

 鉱物学が専門の田賀井名誉教授は「文様などから少なくとも4点はドームに由来するとみていい。被爆で落ちたのであればこれ自体が遺跡であり、このまま保つ。後に捨てられたのであればドーム敷地内に戻した方がいい」と提言した。

(2009年6月20日朝刊掲載)

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