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「保有国の協力必要」 林外相 不参加理由 再び強調

 林芳正外相(山口3区)は21日の記者会見で、オーストリア・ウィーンで開幕した核兵器禁止条約の第1回締約国会議に、日本と同じく米国の「核の傘」の下にある国々のオブザーバー参加が相次いだことに関し「他国の対応についてのコメントは控える」とした。

 林氏は、岸田文雄首相(広島1区)が掲げる「核兵器のない世界」の実現に向けては「核兵器保有国の協力が必要だ」と改めて強調。核兵器禁止条約に「核保有国が一カ国も参加していない」ことから、日本はオブザーバー参加しなかったと説明した。

 ドイツやオーストラリアなど核兵器を含む米国の戦力に安全保障を委ねる国々は署名・批准しない立場ながらも、会議へのオブザーバー参加を決めた。日本がオブザーバー参加しない理由についても問われた林氏は正面から答えなかった。

 松野博一官房長官もこの日の会見で「唯一の戦争被爆国として(禁止条約に)核兵器保有国を関与させるよう努力し、核兵器のない世界に向け現実的な取り組みを進めていく」と、従来の方針を繰り返した。(樋口浩二、口元惇矢)

記者のつぶやき

格好の機会逃す

 落胆はいかばかりか。「一日も早い核兵器廃絶」に向けた行動を願う被爆者たちの胸中を察する。オーストリアで21日始まった核兵器禁止条約の第1回締約国会議に、被爆国日本は背を向けた。かねて「聞く力」を掲げる岸田文雄首相が、オブザーバー参加さえ認めなかったのは残念だ。

 米国など核兵器を持つ国々が条約に参加していないからだという。核兵器の保有や製造など一切を禁じる禁止条約は保有国の立場と相いれない。ただ、その主張を唱える限り核軍縮の議論は前に進まない。広島、長崎の惨禍を知る国に求められるのは、条約に保有国を引き込む役割のはずだ。

 条約制定を主導した非保有国が集う今回の会議は格好の機会だった。条約を否定する「米国の意」(首相周辺)を最優先する外交だけでは、首相が掲げる「現実的な核軍縮」の展望は開けない。(樋口浩二)

(2022年6月22日朝刊掲載)

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