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鵜飼い体験 和らぐ心 ウクライナから三次へ避難 イリーナさん一家 なお憂う 母国の家族や友

 ロシアの軍事侵攻によりウクライナ東部ドネツク州から三次市に住むいとこを頼って避難してきたイリーナ・ブワイロさん(37)一家5人が20日夜、同市の夏の風物詩、観光鵜(う)飼いを体験した。同市に来て約2カ月。地元の人たちの助けで生活は落ち着いてきたが、戦闘が激化する母国の家族や友人への思いは募る。(石井千枝里)

 運営する三次観光推進機構が、伝統文化を通じて心を癒やしてもらおうと招待した。イリーナさんと夫のディミトルさん(38)、長男アレクサンドルさん(12)、長女ズラータちゃん(3)、生後9カ月の次女ポリーナちゃんが、いとこのオクサナ・ヤシチェンコさん(47)とともに鵜飼乗船場(十日市町)を訪れた。同機構の政森進理事長らが青と黄の横断幕を掲げて歓迎した。

 日没後、遊覧船に乗り込み出発。一家は、鵜匠が手縄(たなわ)で巧みに鵜を操ると拍手を送った。涼風を感じながら母国の曲を口ずさむ場面も。イリーナさんは「上手に魚を捕っていて驚いた。明かりのともった風景はずっと心に残る」と笑顔を見せた。

 戦火を逃れ三次に到着したのは4月17日。その後、子どもたちも少しずつ生活に慣れてきた。アレクサンドルさんは5月下旬から八次小(南畑敷町)に通い、オクサナさんの小学5年の次女晏奈さん(11)と同じクラスで勉強に励む。今月上旬には、ズラータちゃんも幼稚園に通い始めた。

 市によると、避難者への物資の提供や就労支援などの協力申請は21日時点で23件が寄せられた。三次広域商工会からはホームベーカリーが寄贈され、他にも住民たちが食料品や衣類を届けてくれているという。

 ただ、ウクライナの自宅周辺では戦闘が続き、現地に残る親族とは連絡が取れない日もあるという。ディミトルさんは「三次に避難してきた直後から『必要な物はないか』と声をかけてくれる心温かい人が多く、本当にありがたい。早く戦争が終わることを願っています」と話していた。

(2022年6月22日朝刊掲載)

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