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社説・コラム

天風録 『平和の礎、24万1686人』

 24万1686人―。沖縄・摩文仁の丘に立ち並ぶ石碑「平和の礎(いしじ)」は、米兵らも含めた沖縄戦の死没者の名前を刻む。今年、一人一人の名を有志が交代で読み上げたところ、250時間かかったそうだ。悲惨極まる地上戦で奪われた命は、とてつもなく重い▲当時の県民の4人に1人が犠牲になったとされる。そんな現地を訪れるたびに圧倒されるのは、戦没者名を漏らさず碑に刻もうとする沖縄の人たちの執念だ。生きた証しを残すことが平和を築く出発点と知るのだろう▲現代版の地上戦が続くウクライナを思う。ロシア軍は住宅地や病院を無差別爆撃するばかりか、大きな穴に民間人の遺体を集団埋葬した場所もあるという。命だけでなく、生きた証しまでも消し去ろうというのか▲沖縄はきのう、地上戦終結から77年。摩文仁の丘での追悼式で玉城デニー知事は、ロシアの侵略が「沖縄戦の記憶を呼び起こす」とし、一日も早い平和回復を願った。ただ岸田文雄首相はウクライナには触れずじまい▲へいわをつかみたい/ずっとポケットにいれてもっておく/ぜったいおとさないように―。式では小2の徳元穂菜さんが詩を朗読した。全ての戦没者に届けとばかりに。

(2022年6月24日朝刊掲載)

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