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[核兵器禁止条約 第1回締約国会議] 10年以内の廃絶要求 冷戦後の削減数根拠 期限明記に意義

 オーストリア・ウィーンで開かれている核兵器禁止条約の第1回締約国会議は、核兵器保有国が禁止条約に加盟した場合は10年以内の核兵器全廃を求めると決めた。核超大国の米国やロシアの過去の削減実績などから、10年以内の全廃が可能と判断した。具体的な期限を定めた意義は大きいが、実効性を持たせるためには保有国の条約参加という高いハードルが残る。(久保田剛、小林可奈、余村泰樹)

 廃棄の期限は、かつて核兵器を保有しその後に全廃した南アフリカ共和国が提案した。22日付で同国が会議に出した文書は「冷戦終結後の大幅な核兵器減少を踏まえた」などとした。

 ストックホルム国際平和研究所の推計によると、1月時点の世界の核弾頭総数は1万2705個。全米科学者連盟のデータによると、最も多かったのは1986年の7万374個で、冷戦終結を挟んだ10年間で4割を超える3万890個が削減された。

 締約国会議では、核政策の専門家が「核兵器の維持と近代化を進める保有国には、すでに解体するインフラが整っている。条約に参加すれば、すぐに廃絶を始められる」と指摘した。各国の廃棄履歴を詳細に分析した結果、保有9カ国は、いずれも10年で全廃が可能と判断したという。

 会議は10年の全廃期限に加え、不測の事態が起きた場合は最大5年延長できると決めた。解体中の重大事故などを想定しているがあくまで例外だ。

 締約国会議はまた、自国に他国の核兵器を置く国が条約に加盟した際の撤去期限を90日とした。かつて米国と旧ソ連の核兵器が配備されていたキューバや台湾、韓国などでは、撤去決定から完了までいずれも90日以内だったことを踏まえたという。

 全廃期限について、条約制定に貢献した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))の川崎哲(あきら)国際運営委員は「年間数千個減らしていた時期を考えれば可能だ。期限を示したことが重要だ」と評価する。

 廃棄年限は核兵器保有国の加盟後に適用されるが、核拡散防止条約(NPT)で核兵器保有を認められた米露中仏英5カ国は禁止条約に反対。一カ国も条約に参加していない。広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(80)は「加盟してからの話となると困難も多いだろう。楽観できず、被爆者としては今すぐ廃絶してほしいというのが本音だ」と話した。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(77)は「目標があれば達成に向けて具体的にどうするべきか考えることができる。保有国は条約に参加し核軍縮に取り組んでほしい」と求めた。

(2022年6月24日朝刊掲載)

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