×

社説・コラム

『想』 畝崎雅子(うねざきまさこ) HIGA設立30周年

 1992年に42人の全国通訳案内士で設立した「ひろしま通訳・ガイド協会」(HIGA)は今年、30周年を迎えました。全国通訳案内士は国家資格です。海外から日本を訪れる人々に向けたプロの通訳ガイドで、英語など10言語に対応します。

 全国では約2万6千人(2021年現在)に上る全国通訳案内士ですが、地方で活動する人は少なく、HIGAの会員は約230人。通訳ガイドのスキルや語学能力が高いと評価されており、広島県を中心に中四国地方、長崎県などでも就業しています。

 HIGAの役割は大きく二つあります。一つは会員同士で研さんする場となることです。原爆資料館(広島市中区)と宮島(廿日市市)は、外国人観光客からの評価が高い場所です。これは、地元の人たちが心に響く説明をしているからこそ得られるもの。私たちも、外国人の鋭い質問やニーズに応えられるよう、日々努力を重ねています。

 もう一つは、広島や近隣の県で開催される国際イベントへの通訳者派遣協力です。15年には、山口県で開かれたボーイスカウトの国際大会「世界スカウトジャンボリー」の参加者2万4千人を原爆資料館などに案内しました。将来、国を担っていく若者たちに感動をもって滞在してもらえたでしょう。また、アジア太平洋経済協力会議(APEC)や先進7カ国首脳会議(G7サミット)の開催支援のほか、移民の歴史を通して広島と関係が深い米・ハワイ州との交流でもガイド役を務めます。

 広島は米アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した映画「ドライブ・マイ・カー」のロケ地となりました。破壊された広島が、どうしてこんなにエネルギーのある町になったのか知りたいと思われるでしょう。また、瀬戸内海の美しい自然も描かれており、訪れたい外国人観光客が増えるはずです。

 新型コロナウイルスの収束後は、これまで以上に、地域の皆さまの頼りになる国際コミュニケーションのプロとして活躍できるよう願っております。(ひろしま通訳・ガイド協会会長)

(2022年6月5日セレクト朝刊掲載)

年別アーカイブ