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『想』 西崎智子(にしざきともこ) 「いいよ」つなぎ名作に

 映画やドラマの中に広島の街を見つけ、誇らしく感じたことはないだろうか。映画「夕凪(ゆうなぎ)の街 桜の国」で堺正章さんを追う田中麗奈さんに生きる喜びを実感させた広島の街、原爆で消えた街や人が生き生きとよみがえった「この世界の片隅に」…。広島にはまだ多くの魅力があふれている。そんな魅力が映像となり、国内外へと発信されるよう取り組んでいるのが広島フィルム・コミッション(FC)だ。本年、設立20年の節目を迎える広島FCはこの間3千本に及ぶ撮影を支援し、広島の特徴ともいえる海外作品支援は全国一のレベルの400本に及ぶ。

 設立当初から携わってきた私は、原爆をテーマにした映画しか撮影されていなかった広島に、テーマにかかわらず撮影していただけるよう根気強く誘致活動を続け、初支援作品「父と暮せば」から米アカデミー賞®国際長編映画賞の受賞で話題となった「ドライブ・マイ・カー」、今夏公開の「こちらあみ子」まで全作品に寄り添ってきた。

 しかしながら広島FCは、さまざまなロケ地となる施設を所有しているわけでも、100人のエキストラになれるわけでもない。広島の皆さんの「いいよ」をつなぐことで、トラブルを解決し、撮影を可能にしている。これら多くの作品は、皆さんの協力があったからこそ生み出されたものにほかならず、広島の力への感謝は尽きない。

 15年以上前、「『いいよ』をつなげば、広島発の名作が生み出されるに違いない」とコラムに書いた。そして、一生懸命つながせていただいた結果、やはり世界が認める名作は生み出された。

 本年3月の米アカデミー賞®授賞式。「『ドライブ・マイ・カー』ジャパン!」。広島を舞台にする映画タイトルが高らかに読み上げられた。そのステージから届いた濱口竜介監督の輝く笑顔を、そして「いいよ」と応援してくださった皆さんと一緒にこの快挙を喜び合えたことを、忘れることはないだろう。

 20年の、全てにありがとう。(広島フィルム・コミッションスタッフ)

(2022年5月28日セレクト朝刊掲載)

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