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社説・コラム

天風録 『失敗を教訓に』

 閣僚の顔ぶれだけではなく、政策もガラッと変わるのが政権交代の醍醐味(だいごみ)だろう。オーストラリアでは今月、9年ぶりに労働党内閣が発足し、過去最多の女性閣僚が誕生した。「ボーイズクラブ」と呼ばれるほど男性優位の豪政界にやっと変化が訪れた▲新政権は、今までの失政を教訓にして政策では温暖化対策にかじを切る。1人当たりの温室効果ガス排出量が先進国では最悪級という汚名を返上したいようだ。環境重視の無所属候補や緑の党の躍進も後押しになった▲韓国では先月、5年ぶりに保守系が大統領の座を奪還した。北朝鮮に対する融和姿勢を早速見直す。新たなリーダーが前任者の方針を転換しようとするのは古今東西同じと言えよう。ただ、変化も度を超すといただけない▲例えば、大統領のこの発言。前政権の脱原発政策を批判した上で訴えた。安全を重視する官僚的な思考は捨てるべきだ、と。トップが安全を軽んじれば、現場にも広がりかねない。仲良くすべき隣国だけに不安になる▲放射性物質の危険性に対する自覚が乏しいのだろうか。11年前の日本の失敗を教訓にしてほしい。「安全神話」に浸っていると、足をすくわれてしまうのだから。

(2022年6月27日朝刊掲載)

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