×

社説・コラム

[核兵器禁止条約 第1回締約国会議] 核廃絶へ被爆者の声を オーストリア外務省のクメント軍縮局長

保有国 変化起こり得る

 オーストリア・ウィーンで21~23日に開かれた核兵器禁止条約の第1回締約国会議で議長を務めたオーストリア外務省のクメント軍縮局長が会議閉幕後、中国新聞の単独インタビューに応じた。ロシアのウクライナ侵攻で核兵器を巡る情勢が厳しくなる中でウィーン宣言を採択した成果を強調。核兵器のない世界を築くため、被爆者たちの訴えが大切になると指摘した。(小林可奈)

  ―初めての締約国会議をどう振り返りますか。
 ロシアによる侵略行為や核の威嚇が起きている今、締約国という共同体として、核の脅威を断固として拒否する強い宣言を採択できたのは価値がある。この条約の運用についても締約国で合意し、道筋も明確にすることができた。

  ―会議には、欧米の「核同盟」の北大西洋条約機構(NATO)加盟国など、安全保障を核兵器に頼る国がオブザーバーとして参加しました。
 NATOの国々やオーストラリアがオブザーバー参加し、自分たちも加わるべき協議であるとの認識を示したことは好ましいことだった。一方、オブザーバー参加しなかった国々がその正当性を示すのは困難を要するだろう。オブザーバーにも発言権はあったのだから。

  ―核兵器保有国などは条約に反対する姿勢を崩していません。
 私たちは、人道的な影響とリスクに関する科学的な根拠に基づき、核兵器に頼ることは賢明ではないと述べている。核抑止は多くの仮定に基づいており、高いリスクを伴う。保有国の為政者が、極端で危険な状況に陥ったとき、どのような行動を取るか分からず、世界の運命も左右される。私たちは、保有国に核兵器の放棄を強制することはできないが、説得はできる。時間は要するが、変化は起こり得る。

  ―核兵器のない世界に向けて国際社会に変化をもたらすため、被爆者や被爆地には何を求めますか。
 核兵器の非人道性や廃絶の必要性を伝えるなど、これまでの行動を続けてほしい。この条約は被爆者や核実験被害者の存在があってこそ成立した。締約国会議で採択した宣言にも、当然ながら「ヒバクシャ」という言葉を盛り込んだ。私自身が2014年に広島、長崎を訪れた経験からも言えることだが、被爆者たちの存在は、核兵器に対する理解を深める上でとても大きい。

 核兵器を巡る問題は、世界のさまざまな人につながっている。この問題の変革は社会全体で広く議論することで生まれる。そのためにも市民社会の役割が引き続き求められる。

(2022年6月29日朝刊掲載)

年別アーカイブ