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震災後の日常をSFに 西島大介さん「All those-」刊行 広島や福島舞台

 広島市西区の漫画家西島大介さん(39)が、広島や福島を舞台にした漫画「All those moments will be lost in time」を早川書房から刊行した。東日本大震災後、広島に移り住んでからの日常を描いている。

 西島さんは2011年4月、高校時代を過ごした広島に、東京から家族で移った。ある日、高台から市街地を一望した。「街が宇宙港に思えた。文明の明かりはきれいだなと。原発を思うと、電気も疎ましく感じるけど、SF的な想像力を加えると、少し心が軽くなった」と打ち明ける。

 震災から1年余りたった12年6月号のSFマガジン(早川書房)に、その体験を寄せた。第1話として収録した「宇宙港」だ。当初は読み切りのつもりだった。今年7月に広島で開かれたSFファンの交流イベントに合わせて、同じ月刊誌の13年5月号から半年間、続きを連載した。

 ただ、震災後半年間は何も描けなかった。「漫画家として何ができるか。震災以降の考え方の移ろいをまとめた作品にもなった」と語る。新しい生活の中で、描くことが癒やしにも感じられる。

 連載中、思いがけない出来事もあった。偶然舞い込んだ、東京での原画展や福島からのイラストの仕事の依頼。自らも現地を訪れ、最後の2話は広島を飛び出し、東京や福島へ向かう。「今までやってきた表現が被災地にもちゃんと届いているんだなと実感し、感動した」と話す。「広島から、できることをやっていきたい」と力を込める。

 8日には、ベトナム戦争を舞台にした描き下ろし漫画「ディエンビエンフー(10)」(小学館)、月刊誌で連載中の原発をテーマにした「ヤング・アライブ・イン ラブ(2)」(集英社)を同時刊行した。(石井雄一)

にしじま・だいすけ
 広島県立観音高卒。2004年に「凹村戦争」(早川書房)で漫画家デビュー。「すべてがちょっとずつ優しい世界」(講談社)で、第3回広島本大賞を受賞。

(2013年11月14日朝刊掲載)

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