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原爆資料館で新着寄贈品公開

■記者 東海右佐衛門直柄

 原爆資料館(広島市中区)の新着資料展が19日、始まった。被爆した女性が着ていたブラウス、熱線で変形した硬貨の塊、亡くなった姉の合格通知書など2008年度に計67人が寄贈した184点を約1年間、東館の地下で公開する。

 焼け焦げたブラウスは、爆心地から800メートルの現在の中区土橋町で被爆し、16歳で命を奪われた澤本笑美子さんが着ていた。親類の澤本直昭さん(64)=西区=から寄贈を受けた資料館によると、両親も自分の娘と分からないほどやけどがひどかった。被爆翌日、「水がほしい」と言いながら亡くなったという。

 溶けた硬貨は今年2月に76歳で死去した吉村光明さんの遺族が寄贈した。吉村さんは、現在の中区舟入中町の自宅で被爆。一緒にいた友人は倒壊した自宅の下敷きになった。迫る炎を前に逃げるしかなかったという。

 硬貨は友を救えなかった自宅跡で後日、見つけた。悔恨の念から被爆体験はほとんど語らなかった。妻のトミコさん(62)=西区=は「大勢の青春を奪った原爆の恐ろしさを知ってほしい」と訴える。

 高石玲子さん(70)=佐伯区=は12歳で亡くなった姉、山田緑さんの県立広島第一高女の合格通知書を寄贈した。医者を夢見ていた緑さんは、現在の中区小網町付近で被爆。全身にやけどを負い、親類宅で6日夜に亡くなった。父の遺品を整理した際「緑の思い出」と題したアルバムに保存されていた。

 寄贈品の展示は1996年度から14回目。寄贈者は04年度の137人をピークに減少傾向が続く。

(2009年6月20日朝刊掲載)

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