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広島サミット準備加速 県警の対策課/宿泊施設

 来年に広島市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)の日程が5月19~21日に決まったのを受け、広島県警や県内のホテル業界が準備を本格化させる。要人警護やテロ対策を担う県警は、国内で前回開催された2016年の伊勢志摩サミット(三重県)を参考に過去最大規模の警備態勢で臨む方針。各宿泊施設も対策チームを設けるなど、サミット関係者の受け入れに向けて動き出した。

県警の対策課

要人警護や対テロ訓練

 伊勢志摩サミットで、三重県警は全国の都道府県警から応援を受け、愛知、三重両県で約2万3千人が警備に当たった。広島県警は7月1日、「サミット対策課」を設置。同課を「司令塔」に最大時で2万人を超える警戒警備態勢を想定する。本番に向けて段階的に全国から警察官を集め、要人警護やテロ対策の訓練も実施する。

 主会場候補のグランドプリンスホテル広島がある宇品島(南区)は三方を海に囲まれ、島への陸路は橋1本に限られる。伊勢志摩サミット主会場の賢島は開幕5日前から立ち入りが規制されており、同様に人や車の出入りが制限されるとみられる。

 08年の洞爺湖(北海道)や伊勢志摩と異なり政令指定都市での開催となり、市街地を含む大規模な警備の実施には「県と市との連携に加え、県民や地元企業の理解と協力が欠かせない」(県警幹部)。県警は交通規制の周知に加え、サミット開催に伴う生活への影響について住民説明会を開く意向だ。G7首脳でそろって平和記念公園(中区)を訪問することも想定され、東京で5月に開かれた日米豪印の首脳会合など都市型の警備手法も学ぶ予定という。

 県警は18年9月、消防や海上保安本部、公共交通機関など56組織で「県テロ対策パートナーシップ推進会議」を設立。広島サミット開催に向け、近く会合を開いて協力を申し合わせる。県警警備部幹部は「サミットが円滑に開催されるよう、これまでの経験も踏まえて関係機関と緊密に連携し、準備を重ねたい」と話している。(野田華奈子)

宿泊施設

繁忙期重なり戸惑いも

 広島県内の宿泊施設は受け入れ準備に動いている。伊勢志摩サミットでは1日最大約2万人が宿泊。同じ規模であれば、県内の約1万2千室はフル稼働が必要になる。広島サミットの期間は修学旅行シーズンとも重なり、施設側には戸惑いも広がる。

 各国首脳や代表団の宿舎候補の一つ、ANAクラウンプラザホテル広島(中区)は各部門で担当者を決め、今月中旬に対策チームを設けた。リーガロイヤルホテル広島(同)はプロジェクトチームの設置を決定。国や県から正式な要請があれば本格的な受け入れ態勢の検討を始める。サミットの主会場候補のグランドプリンスホテル広島も「最大限協力する」と意気込む。

 宿泊施設の予約を巡って混乱も起きている。県と市は24日、来年4月29日~5月22日の宿泊予約の受け付け停止を求める依頼文を県内約900の宿泊施設に送った。サミット関係者の宿泊先を確保するためで「宿泊予約センターで一括して受け付ける計画」と説明した。

 ゴールデンウイークと重なるが任意の依頼で補償はなく、業界からは戸惑いの声が上がる。広島市中区のあるホテルの支配人は「繁忙期に予約を止めてというのは納得できない」と疑問を投げかける。日本旅館協会中国支部連合会の厚見志朗事務局長(72)は「新型コロナウイルス禍で業績が低迷する宿泊業者に補償なしの依頼はなかなか厳しい」と現場の胸中を推し量る。

 県と市は29日、日程の決定を受けて、外務省と受付停止期間の短縮に向けた協議を始めた。(標葉知美、小川満久)

(2022年6月30日朝刊掲載)

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