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広島大仏 60年ぶり帰郷 原爆ドーム隣の寺に安置→奈良へ 中区で9月1日まで公開CF通し実現 協力者ら法要

 原爆犠牲者を慰霊するため復興期の1950年に原爆ドーム(広島市中区)隣の西蓮寺に安置され、今は奈良県にある「広島大仏」が約60年ぶりに一時帰郷を果たした。各宗派の僧侶約20人や、企業経営者たちでつくる実行委員会の関係者が1日、おりづるタワー(同)に集まり開眼法要を営んだ。9月1日まで一般公開している。 (湯浅梨奈)

 大仏を所有する奈良県安堵(あんど)町、極楽寺の田中全義住職(36)や、大聖院(廿日市市宮島町)の吉田正裕座主たちが一斉に読経。荘厳な雰囲気に包まれた。爆心地から約2・6キロで被爆したピアノの演奏もあった。

 大仏は、金箔(きんぱく)を施した高さ約3メートル、重さ約400キロの木製の阿弥陀如来坐像(ざぞう)。大き過ぎるため3分割して台車に乗せ、前夜から約5時間かけて12階までスロープ上を人力で押した。「おりづる広場」に運び込み、合体させて安置した。

 広島大仏は1201年に今の山形県で建立されたと伝わる。広島県内を転々としながら、被爆から5年後、西蓮寺に据えられた。焼け跡となった広島の市民の心のよりどころとなり、当時は宮島と並ぶ観光名所にもなったという。

 ところが60年ごろから所在不明に。2004年ごろ、田中住職の祖父が古物商から譲り受けた。10年前、田中住職が広島大仏の由来を知り、それ以来「里帰り」への協力を広島で呼びかけてきた。共感した広島マツダ(南区)の松田哲也会長(53)が今春、クラウドファンディング(CF)を実施し資金約1250万円を集めた。

 松田会長は「迫力ある大仏を見ながら大切な歴史を知ってほしい」、田中住職は「復興期も広島で宗派を超えて大切にされていた。戦争のない、平和な世界を求めたい」と話した。

(2022年7月2日朝刊掲載)

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