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騒音 市民生活に影響 岩国基地 米空軍30機飛来1ヵ月 早朝・夜間… 広島市上空でも

国際情勢緊迫 運用活発化 指摘の声

 米軍岩国基地(岩国市)に米国から空軍ステルス戦闘機のF35AとF22ラプターの計30機が飛来し始めてから、1日で1カ月となった。早朝や夜間も訓練を繰り返し、騒音の苦情が増えるなど市民生活に影響が出ている。広島市などの上空でも飛行しているとみられる。国際情勢が緊迫する中で米軍の戦略上、岩国基地の運用が今後も活発化すると専門家は指摘する。(川村奈菜、写真も)

 F35Aは米アラスカ州の基地から6月1、4日に計18機、米ハワイ州の基地に所属するF22は15、16日に計12機が飛来した。防衛省は、両機種は7月15日ごろまで約1カ月間、岩国基地を拠点に即応性を向上させる訓練をするとしている。

 基地周辺の5地点で騒音を測定している岩国市のデータによると、午前7時前から午後10時過ぎまで訓練しているとみられる。空母艦載機が基地を離れる6月は例年、騒音件数が減るが、今年6月の70デシベル以上の騒音件数は昨年の1・3倍の1639回。騒音への苦情は市に529件寄せられ、昨年の3倍に上った。

 広島市中心部などでも6月8日夜と22日午後、米軍の戦闘機とみられる機体の目撃情報が相次ぎ、中国四国防衛局は「米軍機の可能性が高い」とみている。広島市平和推進課には8日に42件、22日に32件、騒音への苦情が寄せられた。広島県国際課にも両日で江田島市や廿日市市などから計11件が寄せられた。

 一方、岩国基地は「騒音など訓練の影響を軽減するため可能な限りの対策をしている」と説明する。滑走路の運用時間(午前6時半~午後11時)を尊重し、許可された高度よりさらに高い高度を飛行するなどの具体策を取っているという。

 世界の米軍基地を比較研究する東京工業大の川名晋史准教授(国際政治学)は「今回の米空軍の訓練は対中国を意識しているとみられる。滑走路と港湾がある岩国基地は補給や修理に便利で、九州などの航空自衛隊の基地に近いため合同訓練もしやすい。重要性はさらに高まるだろう」と指摘する。

(2022年7月2日朝刊掲載)

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