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被爆体験 家族伝承へ一歩 活動24年度から 広島で研修開始

 家族の被爆体験を聞き取って語り継ぐ広島市の「家族伝承者」の養成研修が5日、中区の原爆資料館で始まった。被爆者が高齢化する中、家族の協力で新たな証言の掘り起こしと継承につなげるため2022年度に市が新たに設けた制度。被爆の実態や話し方を学び、原則として24年度の活動開始を目指す。

 初日は市内外の41人が参加した。建物疎開に従事した多くの子どもが犠牲になった事実や、国の支援がなく被爆者が困難を強いられた歴史を資料館の学芸員から学んだ。被曝(ひばく)線量が多いほどがんの発症率が高いなどの人体への影響を、医師で広島大の鎌田七男名誉教授(85)から教わった。

 92歳の母親が爆心地1・5キロで被爆した広島市安佐北区のパート矢木慶子さん(62)は「母はウクライナが攻撃される映像を見ると今も胸が苦しいという。壮絶な被爆の体験をどうやって伝えるべきか学びたい」と話していた。

 家族伝承者の1期生には、東京都や山口、福岡県など広島県外の在住者を含め計54人が応募している。研修は17日までの全8回で、核兵器を巡る世界情勢の講義を受けたり、被爆者の証言を聴いたりする。原稿作成や実習を経て、修学旅行生や旅行者向けに講話をする予定でいる。(余村泰樹)

(2022年7月6日朝刊掲載)

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