×

ニュース

被爆者と交流 15歳の物語 広島の松尾静明さん小説出版 中高生に「戦争考えて」

 広島市東区在住の詩人松尾静明さん(82)が、中高生を対象にした小説「わたくし、始まる―ある少女の、ヒロシマ」=写真=を自費出版した。高度経済成長期の広島で、一人の少女が被爆者たちとの出会いを通し、原爆投下や、戦争がもたらした残酷な史実と向き合う。

 主人公の広津理絵は15歳。原爆投下から20年ほどたった頃、戦時下で国民学校の教員だった祖父から、1945年8月5日に広島市中心部で子どもたちが描いた絵を託される。

 放射線を浴びた後遺症で寝たきりの人、ケロイドに苦しむ人、既に亡くなった人―。理絵は、絵を返却するため、成人した本人や遺族たちを一軒一軒訪ね、終戦後も苦しみ続けてきた人たちの存在を知る。

 松尾さんは、60~70年代に、被爆者への聞き取りを重ねた。66年には、全国の小中学生から戦争と平和をテーマにした詩を集め、「少年詩集」を発刊した。今回盛り込んだ証言の多くは、実際に聞いた話を下敷きにしているという。

 数年前、「戦争は自衛隊が行くんじゃけえ、わしらには関係ない」と軽々しく話す高校生の会話を耳にし、小説の出版を思い立った。ロシアに侵攻されたウクライナで市民の犠牲が相次ぐ中、松尾さんは「戦争は必ず子どもたちを巻き込む。この本を読んで、自分ごととして考えてほしい」と話す。92ページ、770円。三宝社☎082(899)4317。(桑島美帆)

(2022年7月12日朝刊掲載)

年別アーカイブ