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アフガン同胞へ支援を 広島大元留学生のムシュタリさん 迫害対象 東広島へ退避

 イスラム主義組織タリバンが支配するアフガニスタンから6月中旬、広島大元留学生のムシュタリ・アンダリブさん(39)一家が東広島市内に退避した。留学経験などを理由に命を脅かされ、同大に助けを求めていた。「救われた」と感謝するが、将来は見通せない。中国新聞の取材に応じ、現状を語った。

 「報復してやる」。財務省の官僚だったムシュタリさんの携帯電話が鳴り始めたのは昨年8月16日。タリバンが政権を掌握した翌日だ。脅迫電話の声の主はかつての入省試験の受験者で、ムシュタリさんが採用を見送ったタリバンの一員だった。

 広島大大学院で中小企業振興を研究し、2018年に帰国した。民主主義国への留学経験者は、迫害の対象だ。「真っ先に殺される」。官僚は、家族も誘拐の標的になりやすい。妻(30)と5~9歳の娘3人から離れ、親戚の家を転々としながら身を潜めた。

 助産師の職を得たばかりの妻は、働く権利を奪われた。目元以外の全身を黒い布で覆わなければならなくなり、女性だけの外出も禁止された。女子教育も激変し、娘たちは小学校までしか通えなくなった。

 昨年8月、すがる思いで同大にメールで救援を求めた。今年3月に受け入れの連絡が届くと即日、家族5人で隣国パキスタンに脱出した。だが、ビザ発給を待つ間に所持金が底を突く。海外在住の親戚に借金をして航空券を入手し、所持金2千円で東広島に着いた。

 何とか緊急避難できたものの、生活は不安ばかり。在留資格の関係上、アルバイトはできない。「これからは日本が祖国になる。自立へ力を貸してほしい」。国外につてがない人は脱出が困難とし「他の家族も早く助けて」と訴える。(湯浅梨奈)

(2022年7月12日朝刊掲載)

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