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鎮魂歌合唱 20周年集大成 観音高卒業生 旧広島二中の原爆犠牲者悼む 31日公演へ練習

 観音高(広島市西区)の卒業生でつくる合唱団が、同高前身の旧広島二中の原爆犠牲者を悼む合唱曲「碑(いしぶみ)」を歌い、多くの命を奪った原爆の悲惨さを伝え続けている。被爆77年を前に31日、初演から20周年の記念コンサートを県民文化センター(中区)で開く。(久保友美恵)

 「リズムを意識して」。観音高の敷地内にある同窓会館に元音楽教諭益田遙さん(88)=西区=の呼びかけが響く。50~60代を中心とする元音楽部員たちでつくる合唱団30人が今月上旬、練習のため集まった。合唱団は2001年に結成し、翌02年から年1回コンサートを開いてきた。だが新型コロナウイルスの感染拡大の影響で20、21年は中止に。3年ぶりの公演に向けて練習にも熱が入る。

 広島二中では1年生323人が亡くなるなど原爆で多くの生徒が犠牲になった。1年生はそのほとんどが建物疎開作業のために本川(旧太田川)沿いの土手に集まっていた。

 「碑」は犠牲になった生徒を追悼するために、広島二中出身の故森脇憲三さんと故薄田(すすきだ)純一郎さんが作り、1970年に発表された。原爆投下の瞬間、生徒たちが逃げ惑う姿や、ある生徒が「お母ちゃん会いたいよ」と最期に語った言葉などを歌詞に刻んだ約40分の大作だ。

 結成時から団長を務める三浦孝さん(65)=南区=は「当初、コンサートは1回だけの予定だったが広島二中の遺族や同窓生から『碑を歌い続けてほしい』との要望を多くもらい、継続を決めた。団員一人一人の熱意で20年も続けてこられた」と話す。

 合唱団が出す案内状は、遺族が減っていることに伴って20年前の約400通から約300通に減少した。事務局の市本郁子さん(64)=安佐南区=は「突然子どもを奪われた親の苦しみを思うと毎年歌いながら涙が出る。被爆者の遺族も高齢化する中、広島二中の歴史を多くの人に知ってもらいたい」と力を込める。

 コンサート「レクイエム碑」は午後2~4時。定員530人。入場料は900円(中学生以下500円)。当日券もある。市本さん☎082(830)1369=平日正午~午後9時。

(2022年7月12日朝刊掲載)

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