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市民の目線で被爆人形論議 広島・中区でワークショップ 「やはり必要」の声も

 広島市中区の原爆資料館の将来像について市民が意見交換するワークショップが18日夜、中区の飲食店であった。被爆者の姿を再現したプラスチック製人形を2015年度末に撤去する市の方針が論議を呼ぶ中、NPO法人ひろしまジン大学(中区)が企画した。(岡田浩平)

 講師に招かれた原爆資料館の志賀賢治館長は、被爆者や有識者を交えて10年前から展示の見直しを検討した結果、被爆者の遺品など「実物」重視とし、現状では人形を撤去する方針でいることを説明。「資料館は寄せられた遺品一つ一つについて持ち主の人生や最期を尋ねている。遺品には強いメッセージがある」と語った。

 続いて、約20人の参加者は4班に分かれて「2100年の資料館の姿」を考えて発表した。「技術が発達し、被爆人形の展示以上に五感で原爆の恐ろしさを体験できるようになっている」「被爆者の生きざま、苦しみを伝える場所であり続けるべきだ」といった意見があった。

 参加した南区のアルバイト店員潮見友香さん(25)は終了後に「目で見て考えるきっかけになるので、人形を残した方がいいと思った。館長の説明や討論を聞いてもやはり、人形はあっていいとの考えは変わらなかった」と話した。

 ひろしまジン大学の平尾順平学長(37)は「人形の是非を議論するだけでなく、背景にある資料館の考えや平和への思いを深める機会になった」と話した。

原爆資料館の展示見直し計画
 有識者でつくる広島市の検討委員会は、資料館の耐震改修に合わせた見直しに向け、2004年から議論を開始。10年7月に基本計画を決定し、ことし3月、遺品など実物資料約200点の効果的配置などを柱にした詳細計画をまとめた。東館は13~15年度、本館は16~17年度に工事し、18年度の全面リニューアルを目指す。

(2013年11月19日朝刊掲載)

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