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戦争文学と作家に焦点 大和ミュージアム きょうから企画展 故阿川さん新資料も

 戦争文学とその作家に焦点を当てた企画展「海軍を描いた作家 阿川弘之・吉田満・吉村昭」が16日、呉市宝町の大和ミュージアムで始まる。阿川さんの遺族から寄贈された新収蔵資料も初公開する。(仁科裕成)

 副題は、「大和」・「長門」・「陸奥」のものがたり。旧海軍をテーマに小説を書いた3人は、それぞれ呉にゆかりがある戦艦大和、長門、陸奥についての著作がある。直筆原稿や取材ノートなど、資料95件を展示する。

 大和ミュージアム名誉館長を務めた阿川弘之さん(1920~2015年)の資料は、6月に寄贈された遺品約1万2千点から47件を展示。特攻隊員を描いた代表作「雲の墓標」の直筆原稿や、海軍提督3部作「山本五十六」「米内光政」「井上成美」の取材ノートなどがある。「軍艦長門の生涯」の原稿には、海軍技術少佐だった福井静夫さんによる修正や情報提供などの描き込みがあり、事実関係を徹底しようとした作家の姿勢が伝わる。

 阿川さん愛用の椅子やランプ、蔵書などを並べて書斎を再現したコーナーも設けた。担当した藤坂彰子学芸員は「阿川さんを身近に感じてもらい、若い世代も作品に親しむきっかけになればうれしい」と話す。

 大和に乗艦し、沖縄特攻作戦に参加した吉田満さん(1923~79年)関連では、「戦艦大和ノ最期」の草稿の全文をパネルで紹介。「陸奥爆沈」で丹念な取材を重ねた吉村昭さん(1927~2006年)の資料は、陸奥の火薬缶など海底からの引き揚げ品も併せて展示している。

 15日、報道関係者向けの内覧会があった。戸高一成館長は「ありのままを伝え、考えようとした3人の戦争との向き合い方を感じてほしい」と話す。

 常設展とセットで一般800円など。来年3月31日まで、火曜休館(祝日なら翌日休館、7月21日~8月31日、年末年始は無休)。

(2022年7月16日朝刊掲載)

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