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原爆被害 「空白」解明を 広島市立大や中国新聞社 シンポジウム 多角的視点 重要性訴え

 シンポジウム「戦争の記憶―ヒロシマ/ナガサキの空白」が18日、オンラインで開かれた。広島市立大広島平和研究所と中国新聞社、長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)の主催。ロシアによるウクライナ侵攻で核危機が高まる中、今なお全容解明できず「空白」の残る原爆被害の実情やその教訓を、どう受け継ぐのか。本紙記者と研究者が意見を交わした。

 3人が基調報告。本紙の水川恭輔編集委員は、連載「ヒロシマの空白」の取材で、原爆死没者名簿や遺族の手記などの公開情報を基に、取材を通して遺骨の身元を特定した事例などを解説。「空白」を埋めるために「まだまだ証言や資料を掘り起こす余地がある」と強調した。

 RECNAの林田光弘特任研究員は、長崎の被爆前の写真を市民から寄せてもらって公開する事業について紹介。写真のデジタル化や教材としての活用が、特に若い世代にとって原爆被害の実態を巡る「リアリティーを取り戻す」ことにつながる可能性を語った。

 平和研の四條知恵准教授は、被爆したろう者を対象に長崎で取り組んだ調査から「語られない被爆体験」について報告。被爆したろう者が「長く忘れられた存在であった」とし、「語られないもの」に目を向け、原爆被害を多角的に見つめる重要性を訴えた。

 次いで、RECNAの山口響客員研究員・特定准教授が加わり討論。中国新聞創刊130周年を記念し、俳優吉永小百合さんによる原爆詩の朗読映像も放映された。中区の中国新聞ホールでの上映会場も含め、計約300人が視聴した。(森田裕美)

 ※シンポジウムの詳報は、26日付朝刊に掲載します

(2022年7月19日朝刊掲載)

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