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社説・コラム

天風録 『ふしぎな学校』

 校庭から桜の花を取ってきて黒板に描き、これがハナビラ、ガクと教えた―。敗戦後で教科書がない小学校の理科。代用教員だった画家安野光雅さんは振り返る。翌週はアリ研究。マッチ箱に入れて2階から落とすとどうなるかを観察した▲物のない時代でもユニークな授業に児童は目を輝かせ、安野先生を取り囲んだことだろう。その後はベビーブームもあったが、日本は大きく様変わりしてきた。小中学生は2010年からの10年間で約100万人も減少。当然、学校は3千校減った▲部活動などの学習機会をどう確保するか―。小規模校の課題である。子どもを含め人口の減った自治体には、若い世代の移住を取り込もうと躍起の市町もある。医療費を無料化したり、給食センター新築など子育て環境を充実させたり▲魅力ある教育を考える別のヒントがあるかもしれない。「安野先生のふしぎな学校」という展覧会が広島市内で開かれている。ユーモアあふれる物語や風景の絵は「こくご」「さんすう」への入り口や面白さを伝える▲子どもの空想力や自分で考える力を育む授業、自然環境…。まちに整えば子どもたちは伸び伸びと育ち、数も増えるのではないか。

(2022年7月20日朝刊掲載))

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