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[ひろフェス 2022] 広島でアニメ制作 招聘作家3人紹介

 「ひろしま国際平和文化祭」(ひろフェス)が8月に開幕するのに先立ち、国内外から招聘(しょうへい)された3人の作家が、広島市内に住んでアニメーション制作を進めている。期間は年末までの約半年間。それぞれの作風や広島での創作の構想を紹介する。(山田祐)

ナタ・メトルークさん(40) ウクライナ出身

時間の無駄 恐れる人描く

 26歳で米国に移住するまで、ウクライナ東部のハルキウで過ごした。両親と妹は今も現地にいる。ロシア軍の侵攻を受ける中、無事を願う日々が続く。被爆の惨状から立ち上がった広島での創作に「いつかウクライナも終戦し、復興するという希望をもらえる」。

 サンフランシスコを拠点に短編アニメーションの制作を手掛けてきた。登場人物の個性を強調した大胆な画風で、日常に潜むちょっとした不条理をテーマに据える。2022年制作の「レギュラー」はひろフェスのアニメコンペティションで入選が決まっており、会期中に上映される。

 広島で制作中のタイトルは「オフタイム」。時間を無駄にすることを極端に恐れる男性が主人公で、時間がばらばらになった世界で初めて人生の喜びを得る―という筋書きだ。

是恒さくらさん(36) 呉市出身

失われた海の文化に関心

 クジラにまつわる伝承や漁業文化についての調査をライフワークとし、刺しゅうやリトルプレスの形で作品化している。原点は米アラスカ大で美術を学んだ日々。日本と同様に捕鯨の文化があることから、現地の人々が親しく接してくれた。その経験がきっかけとなり、各地で語り継がれてきた捕鯨に関連する伝承や文化に関心を寄せるようになった。

 近年は東北地方や北海道を主な創作拠点としており、広島市での滞在は7年ぶり。本格的なアニメーション制作は今回が初めてとなる。広島市内と島しょ部の港や海の文化を取材している。「瀬戸内海の失われた風景をたどるような作品を作りたい」と意気込む。

マフブーベフ・カライさん(30) イラン出身

実写映像 デジタルで彩り

 テヘランの芸術大で「アニメーション監督学」を学んだ。実写の映像にデジタルで彩りを加える技法を得意とする。「現実と空想の間の曖昧な境界線に立つ世界」を表現する。21年の「第四の壁」は日本の第25回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞を受賞。同作はひろフェスでも入選している。

 広島に滞在し、豊かな自然と街のたたずまいの両面に魅力を感じている。イランの細密画の技術を活用しながら、登場人物が日本やイランを旅する作品を想定している。

(2022年7月23日朝刊掲載)

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