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原爆投下の「もし」描く 廿日市の浜部さん小説出版 反戦の思い込め執筆

 広島原爆の日の8月6日を題材にした小説「ループ八月六日」を、廿日市市福面の浜部素男さん(72)が自費出版した。主人公は戦闘機パイロットで、1945年にいったん広島への原爆投下を回避するが、11年後に原爆投下直前の8月6日に引き戻される物語。反戦の思いを込め、初めて小説を執筆したという。

 文庫本80ページ。戦後生まれの浜部さんが、小学生の頃に戦闘機パイロットだった近所の男性の話を聞き「軍都だった広島で、原爆を投下した爆撃機をなぜ迎撃できなかったのか」と疑問を抱いた経験を踏まえて書いた。原爆が落ちていなかったら歴史がどう変わったのかの想像を広げて創作したという。物語は、原爆投下前にタイムスリップしたところで終わる。

 大学卒業後、バイクメーカーやマツダに勤め、販売のため世界中を飛び回っていた浜部さん。中東に駐在していた際には中東戦争に遭遇し、イスラエルの攻撃を避けるためシリアからギリシャに逃れた経験がある。「罪のない子どもが死んでいるのを見た。いつの時代も犠牲になるのは子どもたち。戦争は絶対にいけない」と強調する。

 2年ほど前に東京のFM放送局が募ったラジオドラマのシナリオに応募したのが縁で出版社から声がかかり、同社と費用折半の自費出版で初めて小説を手がけた。浜部さんは「原爆を投下された後も広島の人は世界平和を訴え続けている。主人公に投影した生き方や『仁』の心について考えてもらえたらうれしい」と話している。文芸社刊。550円。廿日市市内の書店などで販売している。(永井友浩)

(2022年7月23日朝刊掲載)

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