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住民「再稼働ありき」 島根2号機安全審査の了解要請 県・松江市は容認示唆

 福島第1原発事故から2年8カ月余り。事故の教訓から発足した原子力規制委員会の下、中国電力は21日、島根原子力発電所2号機(松江市鹿島町)の再稼働手続きに乗り出した。稼働に向け、規制委に申請する安全審査の事前了解を求められた地元、島根県と松江市の両首長は、議会や住民の意見が前提としながらも申請を認める考えを示唆。「再稼働が現実味を帯びる」と、地元住民からは懸念の声が上がった。(樋口浩二、土井誠一)

 「2号機の事前了解をお願いしたい」。島根県庁を訪れた中電の苅田知英社長は切り出し、溝口善兵衛知事に申請書類を手渡した。

 「議会や住民に丁寧に説明していただきたい」。こう繰り返した溝口知事は慎重な発言に終始し、態度の表明を保留。だが、その後の取材では「規制委の審査後に実質的な安全性を判断する」としてきた主張に「変わりはない」とした。

 松江市の松浦正敬市長も「重大な欠陥がない限り粛々と国の審査を受けていただく」と表明。22日以降、中電が県や市、両議会などを対象に順次開く説明会を前に、両者の容認姿勢が示された。

 県、市の見立てはこうだ。「原発の技術的な審査は規制委の仕事。規制委の説明を受けた後、安全性を判断するのが自治体の役割」(県幹部)。県議会にも「規制委の判断までは議論のしようがない」との声が根強く、今回の申請を認めるのと再稼働は別の議論、との見解が大勢を占める。

 しかし、住民には「再稼働への一歩」との懸念もある。脱原発条例の制定を県に求める署名を展開中の市民団体「島根原発・エネルギー問題県民連絡会」の北川泉代表世話人(82)は「中電の『稼働ありき』の姿勢は福島の事故前後で変わっていない」と指摘。「リスクのない発電方法を探る誠意を見せてほしい」と求める。

 再稼働を支持するまつえ北商工会(松江市)の青山正夫筆頭理事(66)も「厳格な審査が前提」と話し、原発の安全性に対する徹底したチェックを規制委に注文した。

(2013年11月22日朝刊掲載)

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