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[2023広島サミット] 名古屋外大の高瀬淳一教授 開催地名で意義が伝わる

合意文書 全世界に影響力

 開幕まであと300日となった広島市での先進7カ国首脳会議(G7サミット)。各国首脳がテーブルを囲む国際会議の役割や史上初の被爆地開催の意味を、サミットを研究する名古屋外国語大の高瀬淳一教授(63)に聞いた。(編集委員・田中美千子)

 サミットは誤解されがちだ。もはや影響力がないとか、政治家のパーティーだとか。どれも間違いだ。

 先進7カ国だけではなく、欧州各国を代表する欧州連合(EU)も出席する。アフリカやアジアなどの途上国代表の首脳も、国連など国際機関のトップも招かれる。つまり、そこで署名された文書は全世界に影響力を持つ。G7サミットには地球統治の機能があるといえる。

 国連も同じような機能を持つが、限界がある。例えばロシアのウクライナ侵攻。国連安全保障理事会は常任理事国のロシアに拒否権があることから、法的拘束力のある決議を通せていない。一方、G7首脳は会合を重ね、実効性のある経済制裁を打ち出している。

 そのサミットが広島に来る。私は正直、驚いた。米英仏の核兵器保有3カ国が被爆地に集うのだから。

 岸田文雄首相は外相だった2016年、三重県の伊勢志摩サミットに伴う外相会合の広島開催をリードした。オバマ米大統領の被爆地訪問にも貢献した。その蓄積にウクライナ危機が重なったからこそ、実現するのだろう。

 開催地名だけで意義が伝わるサミットなど、これまで例がなかった。ロシアが核兵器の使用をちらつかせる中、ヒロシマにG7首脳が集うだけで意味はあるが、さらに核問題に特化した文書を出せれば、より重要なメッセージになる。議長国の手腕が問われる。

 他にも議論すべき問題が多い。食料安全保障、エネルギー、インフレ抑制…。美しい瀬戸内海を前に海洋環境問題が扱われてもいい。

 警備も大きな課題だ。近年の会場は隠れ家のように隔絶された場所ばかり。100万人都市での開催は珍しい。市民生活への影響は必至だが、会議の意義を踏まえれば、地元は誇っていい。経済効果もある。住民の理解が求められる。

たかせ・じゅんいち
 東京都生まれ。早稲田大大学院政治学研究科博士後期課程単位取得満期退学。名古屋外国語大専任講師などを経て03年から現職。著書に「サミットがわかれば世界が読める」など。

(2022年7月23日朝刊掲載)

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