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被爆体験継承に活用 体のイラスト使う「ボディマッピング」 広島の高校生 5人の「縮図」を展示

 被爆者の人生の語りを、等身大の体のイラストに書き込んでいく「ボディマッピング」という手法を用いた体験の継承に、広島市内の高校生24人が取り組んだ。広島大の研究者2人が発案。被爆の記憶だけでなく、生き方を視覚的にも分かりやすく伝えることで被爆者の思いを身近に感じてもらう。中区の県立美術館県民ギャラリーで31日まで、被爆者5人の「人生の縮図」を展示する。

 崇徳高(西区)の生徒6人は6、7月、在外被爆者の支援を続け自らも被爆者の豊永恵三郎さん(86)=安芸区=の話を計5時間聞いた。模造紙(縦180センチ、横90センチ)に豊永さんの似顔絵と体の輪郭を描き、胃がんや前立腺がんを患った年や手術の痕を記した。余白には「9歳、坂町で原爆をみる。その後、段原で家族を捜す」と入市被爆の経緯を記し、「世界から核兵器がなくなること」という豊永さんの願いを大きな文字で伝えた。

 戦後の中学生時代に励んだ陸上や、75歳まで続けた趣味の登山の絵も加えた。2年太田綾音さん(16)は「被爆者から被爆体験以外の話を聞いたのは初めて。中学生の頃の話は自分とも共通点があり、被爆者の存在が近くなった」と話す。豊永さんも「冗談も言い合いながら話ができた。生徒が私の話をどう理解したのか分かりやすいイラストで残るのもいい」と、講演とは違った手応えを感じたという。

 今回の取り組みは広島大ダイバーシティ研究センターの大池真知子教授と同大平和センターのファン・デル・ドゥース瑠璃准教授が発案した。被爆者の協力を得て崇徳高と安田女子高(中区)の生徒計24人が制作した。瑠璃准教授は「若者が被爆者の人生そのものをじっくり聴くことで、原爆によって失われたものの重さを理解できる。今回の取り組みを被爆体験の継承の在り方を探る研究に生かしたい」と語る。

 ボディマッピングは県民ギャラリーで26日始まった「世界の子どもの平和のための美術展」で展示。午前9時~午後5時(29日は午後9時まで)。入場無料。(久保友美恵)

(2022年7月27日朝刊掲載)

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