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審査前に異例の地元了解要請 島根2号機再稼働手続き 中電 高まる不安に配慮

 中国電力が島根原子力発電所(松江市鹿島町)2号機の再稼働手続きに入った。その前提として地元の島根県、松江市に要請した「事前了解」。原子力規制委員会による審査の前に折り込んだのは全国でも珍しい。福島第1原発事故を受け、高まる地元の不安に配慮する中電の姿勢がにじんでいた。(樋口浩二)

 「丁寧に説明させていただく」。21日、島根県庁に溝口善兵衛知事を訪ねた中電の苅田知英社長は、住民や議会に申請内容の説明を尽くす考えを強調した。

 規制委の審査後だけでなく、申請前にも地元の判断を仰ぐ―。2度の事前了解を含んだ手続きは、規制委が稼働手順を示した後の6月に県、市との3者間で合意されたという。

 福島の事故以降「地元の理解なしでの稼働はありえない」との中電の姿勢は強まった。原発事故に備えるエリアが原発30キロ圏に拡大。従来の松江市に加え出雲、雲南、安来市も加わった県にとっても「30キロ圏の人口(約40万人)も多く、稼働手続きに慎重を期すのは当然」(防災部の大国羊一部長)との思いがあった。

 事前了解とは中電が立地する島根県、松江市と結ぶ紳士協定「原子力安全協定」に基づく手続きだ。「原子炉施設に重要な変更」があった場合、中電が地元に求める、と決められている。

 だが、同様の協定を九州電力と結ぶ佐賀県は「事前了解にはなじまない」(古川康知事)と安全審査の申請前の了解を不要とした。着工済みの工事が大半な点などが理由という。島根県のように申請前の了解を求めたのは東京電力に要望した新潟県の1県にとどまる。

 早期稼働に向け一時は9月に了解を求めることも検討していたという中電。「年内申請」の本音を抑えながら県、市との交渉を重ね11月21日、要請に踏み切った。両首長に異論はなかった。

 ただ住民には不満もある。原発約2キロの松江市鹿島町、農業中村栄治さん(77)は「福島の事故原因が分からない段階での稼働手続きは拙速」という。

 21日「百パーセントの安全はない」と述べた苅田社長。「安全対策に終わりはない」との宣言を実行することに加え、住民の声に耳を傾ける姿勢が問われている。

(2013年11月23日朝刊掲載)

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