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被爆ピアノ 調べ脈々 安佐南区で映画上映とコンサート 調律師矢川さん「平和の尊さ考えて」

 77年前の原爆投下による熱風に耐えた「被爆ピアノ」が今年も優しい音色を響かせている。25日に安公民館(広島市安佐南区)で映画上映とセットで開催されたコンサート。ピアノを修復した調律師矢川光則さん(70)=同区=が見守る中、市民65人が聞き入り、平和への願いを新たにした。(平田智士)

 会場に運び込まれたのは爆心地から2・6キロの南区の民家で被爆したピアノ。矢川さんが寄贈を受けた被爆ピアノ7台のうちの1台だ。安田女子大教育学部3年前重由華子さん(20)がドビュッシー作曲の「月の光」や「亜麻色の髪の乙女」を演奏し、2代目広島市歌も披露された。

 被爆2世の矢川さんはピアノを載せた4トントラックを自ら運転し、2005年から全国を回っている。47都道府県で地元の演奏家とともに約3千回のコンサートを開いてきた。この日、「ピアノの音色を平和の尊さを考えるきっかけにしてほしい」と呼びかけた。

 コンサートに先立ち、上映された映画「おかあさんの被爆ピアノ」(20年公開)は、東京の被爆3世の大学生が調律師と交流し、ピアノを寄贈した母や祖母の思いを知って演奏に挑む物語。調律師は矢川さんがモデルになっている。

 イベントは安公民館の主催。最後に会場でピアノを弾きたい人を募り、安北小5年高橋奏馬さん(10)と妹の同小2年沙音さん(7)が手を挙げた。順番に鍵盤に向かい、演奏後は拍手が湧いた。奏馬さんは「被爆ピアノの存在を友達に伝えたい」と話していた。

(2022年7月28日朝刊掲載)

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