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森重昭さんとオバマ元大統領 感動の抱擁 油絵に 柳井の図書館で展示

 広島で被爆死した米兵捕虜を長年調べている広島市西区の被爆者森重昭さん(85)と、米国のオバマ元大統領が抱き合う姿を描いた油絵が27日、米兵の乗った爆撃機が77年前に墜落した柳井市で展示された。墜落現場の近くで年内の開館を予定する平和記念館に森さんが贈った。

 「平和の兆し」と題した縦91センチ、横72センチの油絵は、富山県の画家才田峰風(ほうふう)さん(60)が描いた。2016年、現職の大統領として初めて広島市を訪れたオバマ氏が平和記念公園(中区)で森さんと会った時の光景に感動し、絵筆を執ったという。

 森さんの右下に赤い原爆の炎を、対照的にオバマ氏の左上に白い平和の光をあしらい、戦火が消えるのをイメージした。作品を贈られた森さんは「迫力に度肝を抜かれた」と自宅で保管していたが、多くの人に見てもらうため、柳井市伊陸(いかち)で平和記念館を計画する会社社長武永昌徳さん(71)に相談した。

 太平洋戦争末期の1945年7月28日、山口県伊陸村(現柳井市)に米軍のB24爆撃機が墜落した。沖縄から飛来し、呉沖で爆撃中に受けた対空砲火が原因だった。脱出した乗組員9人のうち6人は連行された広島市内で、米軍が投下した原爆の犠牲になった。

 伊陸で生まれ育った武永さんは、この惨禍を伝えようと墜落現場の地図や乗組員の写真など約100点を集め、記念館で展示しようと計画する。02年、文芸雑誌に載った森さんの寄稿文を読み、米兵捕虜が被爆死した事実を知った。15年、捕虜のドキュメンタリー映画を作るため地元を訪れた米国人監督や森さんを手伝い、親交を温めてきた。

 当初は今月28日に記念館を開く予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で延期した。森さんから贈られた油絵は同市柳井の柳井図書館で8月31日まで展示した後、記念館の開館を待つ。

 この日、記者会見した武永さんは「若い人たちに絵を見てもらい、平和学習に役立ててほしい」と望んだ。オンラインで参加した森さんは「絵と別れるのは寂しいが、平和の大切さを伝える素晴らしい絵だと思う」と話した。同図書館☎0820(22)0628。(山本祐司)

(2022年7月28日朝刊掲載)

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