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大久野島沖の毒ガス兵器? 本紙潜水取材で確認

■毒ガス問題取材班

 竹原市大久野島の沖合海底に不審物が約15個あることが20日までに、中国新聞の潜水取材で分かった。化学兵器の専門家は「形状から毒ガス兵器の可能性がある」と指摘している。今年1月、毒ガス兵器とみられる鉄塊が見つかった海域の付近。旧日本軍の毒ガス工場があった島周辺に、数多くの不審物が沈んでいる実態が浮かぶ。

 今月2日、大久野島北側約60メートルの沖合で潜水取材をした。環境省の海底送水管敷設事業に伴う調査で今年1月、不審物約20個が見つかり、呉海上保安部が地域航行警報を出している海域から東に約30メートル離れた海底。水深は20~10メートル。ほぼ30メートル四方のエリアで写真や動画を撮影した。

 新たに見つかった不審物は長さ20センチ程度、直径10センチ以内とすべてほぼ同じ大きさだ。鉄塊とみられ、砂に埋もれて散在していた。腐食が激しく、さびや貝殻が付着していた。

 形が、筒状と分かる不審物もあった。島北部の海岸でこれまでに発見された旧軍の毒ガス兵器「あか筒」の残骸(ざんがい)と形が酷似している。

 これらの不審物を写真で確認した化学兵器に詳しい常石敬一・神奈川大教授は「断定は難しいが、形状からあか筒である可能性が高い」と指摘。「あか筒は猛毒のヒ素を含む。海岸に打ち上げられる可能性があり、撤去と一帯の調査が必要だ」との見解を示した。

 中国新聞は、第6管区海上保安本部(広島)のほか、広島県を通じて環境省に通報。6管は、海上自衛隊呉地方総監部に写真を送った。同総監部は中国新聞の取材に対し「写真だけでは判断できない」と回答した。

 島の周辺海域では、環境省が、島北側と対岸の竹原市忠海地区を結ぶ2.4キロの海底送水管敷設ルート一帯で、不審物約20個のほか、367カ所で金属反応を確認。事前に約4億3500万円を投入した事業を「工事には危険が伴う」と断念している。

 毒ガス情報センターを持つ環境省は22日、化学兵器や環境保護などの専門家で構成する定例の検討会を開催。大久野島沖の不審物を議題に、住民の安全・安心を確保する方策を話し合う。

大久野島の毒ガス工場
 1929年、旧陸軍造兵廠(しょう)火工廠忠海兵器製造所として開所した。①「きい1号」と呼ばれたびらん性のイペリット②催涙性の「みどり」③くしゃみ性の「あか」-などを製造した。米太平洋陸軍の資料によると、総生産量は原液状態で6616トンに上る。

(2009年6月9日朝刊掲載)

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