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ドイツで8・6灯籠流し 広島市立大・上田流和風堂 世界平和への祈り共有

ハノーバー市民の茶道体験も

 広島市立大(安佐南区)と茶道上田宗箇流の公益財団法人上田流和風堂(西区)が8月6日、広島市の姉妹都市のドイツ・ハノーバー市で原爆犠牲者を悼む灯籠流しをする。同大の学生とハノーバー市民が作った100個の灯籠を浮かべ、参加者には茶道文化を体験してもらう。来年の姉妹都市提携40周年を前に、広島を象徴する風景と文化を現地で伝え、世界平和への祈りを共有したいと企画した。(加納亜弥)

 灯籠は高さ約30センチの四角柱で、ハノーバーの市庁舎に隣接する池に6日夜に浮かべる。市立大芸術学部の藤江竜太郎講師(43)が渡欧し、同学部の学生たちが描いた50個分を持って行く。現地でも市民約50人を募り、50個を作る。折り鶴の再生紙に折り鶴の絵を描いてもらい、灯籠を囲う。

 制作した人には、現地で茶道文化の発信を続ける上田宗箇流の正教授で広島市の特任大使の中本洋世さん(52)がお茶とお菓子を振る舞う。市立大で折り鶴の羽同士がつながったデザインを描いた1年岡本実記さん(18)は「二つの市は草の根でつながってきた。その歴史が未来にもつながってほしいという願いを込めた」と話した。

 第2次世界大戦で壊滅的な被害を受けた両市は1983年に提携を結び、青少年の相互訪問や、市立大とハノーバー専科大の学術交流などをしてきた。88年には広島市が現地に茶室「洗心亭」を寄贈し、その後に上田流和風堂が指導者を派遣。その一人の中本さんは約30年にわたり、現地の市民大学で作法を教えたり、原爆の日に毎年、現地で開かれる平和記念式典で献茶をしたりしている。

 市立大の藤江講師は「世界中から広島に寄せられた折り鶴に祈りを込め、再び世界にお返しする場にしたい」。中本さんは「広島には原爆投下前から続いてきた文化もある。その一端を現地で披露することで、今後の交流に一層の深みが出ると思う」と話している。

(2022年7月29日朝刊掲載)

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