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[ヒロシマの空白] 旧国鉄職員の犠牲 調査 国労広島が今夏 情報提供呼びかけ

 国鉄労組広島地方本部(広島市東区)は今夏、広島市への原爆投下で犠牲となった旧国鉄職員の実態調査を始める。被爆後に多くの鉄道員が復旧作業に尽力したが、これまでに把握できた犠牲者は305人(28日時点)に過ぎず、国労は「実際にはもっと多いはず」とみている。慰霊碑の建立から半世紀を迎えることし、退職者や遺族に情報提供を呼びかけていく。

 広島市編さんの「広島原爆戦災誌」によると、旧国鉄の広島鉄道局の被爆者は死者152人、行方不明88人、重軽傷者1709人に上る。鉄路が壊滅的な被害を受ける中、生き残った職員らが復旧作業を進め、被爆翌日の8月7日に宇品線、8日には山陽線が開通したと記している。

 国労の被爆者対策協議会は1973年8月、広島市中区東白島町の公園内に「国鉄原爆死没者慰霊碑」を建立。毎年8月に慰霊祭を開き、名前が把握できた305人の犠牲者を悼んでいる。さらに多くの鉄道員が原爆による被害で亡くなったとみられるが、詳細を把握できていないという。

 碑の建立から50年目を迎える今夏、国労は退職者や遺族に広く情報提供を呼びかけ、犠牲者の実数に迫る調査を進める。国労広島地方本部の徳永聖書記長(62)は戦災誌に記された死傷者数を踏まえ「戦後に亡くなった人も合わせると少なくとも犠牲者は千人を超えるはず。年々、被爆当時の状況を知る人が少なくなっており、実態把握を急ぎたい」と話している。情報提供は、国労広島地方本部☎082(264)1771。(和多正憲)

(2022年7月29日朝刊掲載)

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