「ゲン」 ペルシャ語に 東広島のイラン人サラさん 「立ち上がる姿 若者に力」
13年11月27日
原爆投下後の広島でたくましく生きる少年を描いた漫画「はだしのゲン」を、東広島市西条町のイラン人女性サラ・アベディニさん(29)がペルシャ語に翻訳している。今夏までにまず2巻を500部ずつ母国で刊行。「苦難から立ち上がるゲンたちの姿は、母国の若者たちに希望を与える」と語る。
歯科医師だったサラさんは2007年、夫の留学に合わせて来日。自身も広島大大学院で歯科矯正学を専攻し、12年に博士号を取得した。
昨年12月に亡くなった漫画家、中沢啓治さんの代表作のゲンとの出会いは大学院生だった09年夏。ゲンの翻訳を進めているボランティア団体が留学生に協力を求めていると知り、英語版を初めて手に取った。広島、長崎に原爆が投下された歴史は知っていたが、漫画の具体的な描写に圧倒された。
研究の合間を縫って約1年半かけ、4巻まで英語版から翻訳し、日本語の原本でニュアンスなどを確認した。イランで許可を受けられるよう、女性が肌をあらわにしているシーンは、親戚のグラフィックデザイナーに上から服を描いてもらうなどした。現地の出版社とのやりとりも自身で進め、一部私費も投じて出版にこぎ着けた。
サラさんによると、イランでは漫画は一般的でなく、手に取ってくれる人もまだ少ないという。読んだ人からは「ストーリーは悲しいが、平和とは何か考えさせられた」「早く次の巻を出して」などの反響も届いた。
「私たち若い世代のイラン人にとって、日本は豊かな国のイメージ」とサラさん。「過去にどんな悲しみがあり、どうやって国を立て直してきたかを知ることで、これからのイランを興していく力にしてほしい」と願っていた。(新谷枝里子)
(2013年11月25日朝刊掲載)
歯科医師だったサラさんは2007年、夫の留学に合わせて来日。自身も広島大大学院で歯科矯正学を専攻し、12年に博士号を取得した。
昨年12月に亡くなった漫画家、中沢啓治さんの代表作のゲンとの出会いは大学院生だった09年夏。ゲンの翻訳を進めているボランティア団体が留学生に協力を求めていると知り、英語版を初めて手に取った。広島、長崎に原爆が投下された歴史は知っていたが、漫画の具体的な描写に圧倒された。
研究の合間を縫って約1年半かけ、4巻まで英語版から翻訳し、日本語の原本でニュアンスなどを確認した。イランで許可を受けられるよう、女性が肌をあらわにしているシーンは、親戚のグラフィックデザイナーに上から服を描いてもらうなどした。現地の出版社とのやりとりも自身で進め、一部私費も投じて出版にこぎ着けた。
サラさんによると、イランでは漫画は一般的でなく、手に取ってくれる人もまだ少ないという。読んだ人からは「ストーリーは悲しいが、平和とは何か考えさせられた」「早く次の巻を出して」などの反響も届いた。
「私たち若い世代のイラン人にとって、日本は豊かな国のイメージ」とサラさん。「過去にどんな悲しみがあり、どうやって国を立て直してきたかを知ることで、これからのイランを興していく力にしてほしい」と願っていた。(新谷枝里子)
(2013年11月25日朝刊掲載)