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胎内被爆 手帳審査滞る 「黒い雨」40人超 母死亡想定せず

 広島原爆の投下後に降った放射性物質を含む「黒い雨」の被害者救済を巡り、当時母親の胎内にいた人の被爆者健康手帳の交付審査が保留になっていることが31日、分かった。国が4月から運用した新たな被爆者認定基準では、母親が死亡した場合の審査方法を想定しておらず、少なくとも40人超の審査が滞っている。

 新基準では、被害者の証言や当時の居住地から黒い雨に遭ったと否定できず、がんや肝硬変など11疾病のいずれかにかかっていれば手帳が交付される。ただ黒い雨を浴びた母親のおなかにいた「胎内被爆者」についてはどのように審査するかを想定しておらず、広島県と広島市が国に対応を照会しているという。

 旧筒賀村(広島県安芸太田町)で母親が黒い雨の被害を受けたという安芸太田町の城山大賢さん(76)は昨年11月、県に手帳の交付を申請したが現時点で審査は止まっているという。すでに母親は舌がんで亡くなっており、城山さんは「おなかにいた私も放射線の影響を受けているはず。母の証言がなくても、周囲の証言から胎内被爆者だと認めてもらいたい」と話す。

 黒い雨被害者を支援する会の竹森雅泰弁護士は「周辺の供述や母親の死亡診断書から原爆投下後に黒い雨に遭った事実や疾病の有無は確認できるはず。国は胎内被爆者も認めるべきだ」と指摘している。(余村泰樹、松本輝)

(2022年8月1日朝刊掲載)

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