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社説・コラム

社説 旧統一教会と政治 関わり徹底的に解明を

 安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への関心が高まっている。

 容疑者は、母親が巨額の献金をした旧統一教会への恨みを募らせたと供述しているからだ。安倍氏については、友好団体に昨年、ビデオメッセージを寄せたため、シンパだと信じていたようだ。逆恨みの凶行であり、到底許されない。

 事件の解明が進むにつれ、旧統一教会が、野党を含め政界に広く深く浸透していることも明らかになってきた。かつて霊感商法や集団結婚式で社会問題になったにもかかわらず、だ。

 安倍氏の実弟、岸信夫防衛相(衆院山口2区)をはじめ大臣3人も旧統一教会との関わりを認めている。岸氏は、社会問題になった組織だとの認識はあったものの、選挙の投票を呼びかける電話作戦などをボランティアで手伝ってもらったという。

 もちろん、宗教団体から協力を得ること自体は問題ない。ただ、反社会的との指摘もある旧統一教会との接触には慎重さが必要ではないか。関連団体に政治家が関与することで、信頼できる組織だとの「お墨付き」を与える恐れがある。事実関係の徹底的な解明が求められる。

 支援を受けたり集会に参加したりしていた国会議員は100人を超す、と指摘されている。立憲民主党や日本維新の会、国民民主党の議員も含まれるが、最も目立つのは自民党の最大派閥、安倍派の議員である。

 例えば、第1次安倍政権で首相秘書官を務め、先の参院選の比例代表で当選した井上義行氏だ。旧統一教会の「賛同会員」で、支援を受けたとされる。

 茂木敏充自民党幹事長は「党としては一切関係がない」と消極的だ。調査に乗り出した野党との差は甚だしい。

 旧統一教会と政界との関わりは1960年代後半にさかのぼる。創設者の文鮮明氏が提唱した、共産主義への勝利を目指す「勝共理論」に岸信介元首相が賛同し、協力関係を築いた。

 名称変更の際も、政治の関与が疑われている。高額のつぼや印鑑を買わせる霊感商法の被害が続出して社会問題化した90年代から希望したとされるが、文化庁は「実態が変わっていない」などと認めていなかった。

 ところが、2015年、安倍政権下で、旧統一教会と関わりのあった下村博文氏が文部科学相の時に変更が受理された。納得できる説明を求めたい。

 政策への影響も調べなければならない。憲法改正や防衛力強化、夫婦別姓や同性婚反対など旧統一教会の考え方は自民党保守系と類似している。多額の経費を使って夫婦別姓や同性婚を認めないようロビー活動をしているとの指摘があるだけに、旧統一教会からの働き掛けの有無も含めた検証が急がれる。

 霊感商法の被害額は昨年までで1237億円に上る。被害者による損害賠償請求訴訟で相次ぎ敗訴した旧統一教会が改善を発表した09年以降も、被害は続いているという。

 トラブルの絶えない組織は野放しにはしておけまい。

 旧統一教会の実態を明らかにするとともに、政治との不明朗な関係を断ち切らなければならない。各政党はもちろん、国会として徹底的に調べて、国民に明らかにすべきである。

(2022年7月30日朝刊掲載)

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