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被爆直後 助産師の奮闘 「生ましめんかな」モデル小嶋さんら企画 広島 5日から展示会

 被爆直後の焼け野原で生まれた新たな命と、その命をつなぐために奮闘した助産師たちの姿を伝える展示会が8月5~8日、広島市中区袋町の合人社ウェンディひと・まちプラザである。原爆投下2日後に助産師に取り上げられた小嶋和子さん(76)=南区=と、中区の助産師田中敬子さん(56)が初めて企画した。

 小嶋さんは77年前の8月8日、千田町(現中区)のビルの地下室で産声を上げた。「くらがりの地獄の底で新しい生命は生まれた」-。その光景をモチーフに、原爆詩人・栗原貞子が代表作「生ましめんかな」を作った。展示会では小嶋さんの家族写真や、小嶋さんのインタビューが載る雑誌や本などを飾る。

 中国新聞朝刊で1988年7、8月に掲載された「助産婦のヒロシマ」(全10回)の記事も紹介。両腕に大やけどを負いながらも8月6日夜、大雨が降る畑の中で若い母親のお産を支えた助産師の故益田小蝝(こえん)さんの証言や、負傷者がひしめく避難先で助産師に赤ちゃんを取り上げてもらった女性の証言を伝える。

 展示会を企画した小嶋さんと田中さんは2016年から、小中学生に小嶋さんが生まれた経緯や命の大切さを語る活動をしてきた。田中さんは「数え切れない命が奪われた悲惨な状況の中でも生まれた命があり、支えた人がいた。悲しい歴史の中にもこんな希望があったと広く知ってもらいたい」と語る。

 ロシアの侵攻を受けるウクライナで、戦禍の中でも赤ちゃんが誕生しているニュースを目にし、田中さんはその思いを一層強くしたという。小嶋さんは「展示を見て、大変な状況で出産した人たちの思いを想像してもらいたい」と話している。

 午前10時半~午後3時半。入場無料。会期中、小嶋さんと田中さんも会場を訪れる予定。問い合わせはメールで受ける。keymws27@gmail.com(久保友美恵)

(2022年7月30日朝刊掲載)

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