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首相、NPT初演説 「核なき世界」5本柱の行動計画提示 露の威嚇行為批判

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議が1日、米ニューヨークの国連本部で7年ぶりに開幕した。約190カ国・地域の政府代表が核軍縮や核不拡散の道筋を話し合い、最終文書を採択できるかどうかが最大の焦点となる。岸田文雄首相は日本の首相として初めて出席し、英語で演説。核兵器不使用の継続など5本柱の行動計画を示し「道のりが厳しくても、核兵器のない世界に向け現実的な歩みを一歩ずつ進めなくてはならない」と訴えた。(ニューヨーク発 小林可奈、樋口浩二)

 首相は演説冒頭で、ウクライナに侵攻したロシアの核兵器による威嚇に触れ「核兵器の惨禍が繰り返されるのではないかと世界が深刻に懸念している」と強い危機感を表明。NPT体制の維持・強化が国際社会の利益になるとして日本を「守護者」と打ち出した。

 その上で行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」を提示。一つ目に核兵器不使用を続ける重要性を掲げ「ロシアのしたような核兵器による威嚇、ましてや使用はあってはならない」と強調。ほかに核戦力の透明性向上▽核兵器数の減少傾向の維持▽核不拡散の確保と原子力の平和利用の促進▽各国のリーダーによる被爆地訪問の促進―も盛り込んだ。

 これらに絡み、9月の国連総会に合わせた包括的核実験禁止条約(CTBT)の首脳級会合の主催や、11月23日の広島市での「国際賢人会議」開催についてアピール。国連に1千万ドルを出して「ユース非核リーダー基金」を設け、若者を日本に招いて被爆の実態に触れてもらう構想も示した。

 首相の演説に先立ちアルゼンチンの外交官グスタボ・スラウビネン氏を議長に選出。グテレス国連事務総長は、核の脅威は高まり「人類は広島と長崎の恐ろしい炎から得た教訓を忘れつつある」と懸念を表明した。政府代表による一般討論演説は4日まで続く。5日の非政府組織(NGO)による発表では、被爆者たちが核兵器廃絶の願いを届ける予定だ。

 2015年の前回会議は中東の非核化などで意見が対立し、最終文書の採択に至らなかった。今回はウクライナ情勢が大きな障壁となる上に、この6月に第1回締約国会議があった核兵器禁止条約を巡る非保有国と保有国の間の溝も深い。2回連続の決裂回避へ各国の歩み寄りが課題となる。

 高齢化する被爆者たちは現地で被爆証言し、日本被団協は原爆展を開催。被爆77年を迎えて核軍縮か核軍拡かの岐路にある国際社会へ核兵器の非人道性を発信し、廃絶を後押しする。

核拡散防止条約(NPT)
 1970年に発効し、日本は76年に批准。95年に無期限延長が決まった。核兵器の保有を米ロ英仏中に限定し、他の国には製造や取得を禁じる代わりに原子力の平和利用を認める。約190カ国・地域が加盟する。事実上の核兵器保有国のイスラエルと、インド、パキスタンは未加盟。北朝鮮は2003年に脱退を宣言した。再検討会議は原則5年に1度開かれるが、今回は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2年余り延期された。

(2022年8月2日朝刊掲載)

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