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「核のボタン無用に」 平和宣言 広島市が骨子 各国へ惨禍直視も要望

 広島市の松井一実市長は1日の記者会見で、被爆77年となる6日の原爆の日に平和記念式典で読み上げる平和宣言の骨子を発表した。ウクライナに侵攻したロシアが核兵器による脅しをちらつかせる中、ロシアの文豪トルストイの格言を引用。軍事力を背景にした戦争に警鐘を鳴らし、「一刻も早く全ての核のボタンを無用のものにしなくてはならない」と訴える。

 引用するのは「他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはならない。他人の幸福の中にこそ自分の幸福もあるのだ」との一文。ロシアのプーチン大統領を念頭に「他者を威嚇し、自分中心の考えを貫くことは許されない」と説く。昨年10月に96歳で亡くなった前広島県被団協理事長の坪井直さんの「ネバーギブアップ」の精神を受け継ぎ、核兵器廃絶を目指し続けると宣言する。

 また、来年5月に市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)に触れ、各国の政治リーダーが被爆地を訪れて原爆の惨禍を直視するよう要望。政府へは、核拡散防止条約(NPT)再検討会議で保有国と非保有国の橋渡し役を果たし、核兵器禁止条約の次回締約国会議への参加を求める。

 松井市長は「ウクライナ侵攻で核兵器使用の懸念が顕在化したにもかかわらず、世論は核抑止力の拡大に理解を示す傾向にある。流れを変えるためにも、今年の平和宣言は例年以上に重要だ」と述べた。

 式典は6日午前8時から中区の平和記念公園で営まれる。(和多正憲)

(2022年8月2日朝刊掲載)

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