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「前へ」 生きる姿描く 漫画「声の新聞」作者の思い 怖さ抑え 使命感に焦点

 中国新聞社が企画した漫画「声の新聞 力の限り」。制作を担ったのは地元の20~40代の漫画家たちです。原爆という重いテーマに悩みつつ、若い世代に伝えようとしたのは、原爆のむごさだけでなく、前を向こうと生きた人たちの姿でした。(奥田美奈子)

 漫画家くぼなおこさん(40)が心を砕いたのは、子どもに読まれるための工夫だった。「漫画は読み手が主体的にめくるメディア。手が止まれば何も伝わらなくなってしまうんです」

 漫画表現を教える大学講師でもあるくぼさん。「はだしのゲン」を授業で扱うと、ある学生にこう言われた。「私はもう見られません。トラウマ(心的外傷)があります」と。原爆投下シーンが幼心に突き刺さったままのようだった。

 「原爆の悲惨さを知ることは大切。ただ、表現方法や受け手の感受性によっては、原爆の情報を一切受け付けなくなる恐れがあるのか」。くぼさんは、はっとしたという。

 今作「声の新聞―」では、登場人物を丸みのあるタッチで描画。パステルカラーも用いて、優しい色合いで仕上げた。怖い、暗いという印象を先行させないためだ。

 その上で、当時の新聞社員が何を思ってどう行動したのかを、そのまま切り取るように心掛けた。「家族を思ったり、使命感に燃えたり。いまに生きる私たちにも共感できる部分が多くあると思うからです」

 作画に加わった木々ゆきさん(28)=三次市=と坂井香予さん(21)=広島市西区=は、物語をこう受け止める。「壊滅した街でも生きて働く人がいた。その息遣いに気付き、新たな視点が持てた」「もっと事実をきちんと知りたいと思うようになった」。くぼさんは「子どもたちにも、この漫画をきっかけに、原爆について見て聞いて、考え続けてほしい」と願っていた。

 漫画「声の新聞―」の感想をお寄せください。匿名希望の方も住所、名前、年齢、電話番号を教えてください。〒730―8677編集局「声の新聞」係▽メールu35@chugoku‐np.co.jp

 くぼさんたちが作品に込めた思いを聞いた詳しいインタビューはこちら

(2022年8月2日朝刊掲載)

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