×

ニュース

廿日市市育ち 15歳安塚さん 被爆バイオリン 奏でる平和の音 5・6日に広島で披露

 広島県廿日市市育ちで、桐朋女子高(東京)音楽科1年安塚かのんさん(15)が5、6の両日、広島市中区の原爆ドーム周辺で被爆バイオリンを演奏する。「多くの演奏者の思いがこもり、この楽器にしかない価値がある」。ロシアのウクライナ侵攻に終わりが見えない中、若き演奏者が被爆地広島から平和の音色を響かせる。(浜村満大)

 安塚さんは5日夜に原爆ドーム対岸の元安川親水テラスで、6日に紙屋町地下街シャレオでそれぞれある催しに出演する予定。学校法人広島女学院(東区)所有の被爆バイオリンで「原爆を許すまじ」など数曲を演奏する。7月下旬から廿日市市の実家に戻り、練習に励んでいる。

 2歳でバイオリンを始めた安塚さん。中学1年の時、東京と兵庫県尼崎市であった「万里の長城杯国際音楽コンクール」の中学生部門で1位に輝くなど実績と経験を重ねている。昨年初めて被爆バイオリンを弾いた時、「深みのある音色。演奏してきた多くの人の魂や思いが詰まっている」と歴史の重みを感じ、また奏でたいという思いが募った。

 忘れられない演奏がある。小学6年の時、戦禍で傷ついた子どもを保護、治療する非政府組織(NGO)「ドイツ国際平和村」(同国オーバーハウゼン市)の施設を訪ね、手や足を失った子どもたちを前にバイオリンを奏でた。子どもたちは安塚さんを囲むように集まり、笑顔で聞き入ったという。「音楽の力は世界共通で偉大だと実感した。演奏でみんなを楽しませたい」と意気込む。

 プロ奏者を志し、今春に上京。今回は高校生になって初めて地元で演奏する舞台でもある。「平和に思いをはせながら演奏するので、願いを共にしながら聞いてほしい」

被爆バイオリン
 広島女学校(現広島女学院中高)の音楽教師だったロシア人のセルゲイ・パルチコフさん(1893~1969年)が所有していた。パルチコフさん一家は爆心地から約2.5キロ離れた現在の広島市東区牛田地区の自宅で被爆した。バイオリンは倒壊した家屋から探し出され、86年にパルチコフさんの長女が広島女学院に寄贈した。2012年に修復され、音色を取り戻してことしで10年となる。広島女学院歴史資料館(東区)で展示されている。

(2022年8月3日朝刊掲載)

年別アーカイブ