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連載・特集

緑地帯 熊原康博 地歴ウォークはやめられない⑧

 私は、活断層研究の傍ら、地域の地理や歴史を楽しみながら調べてきた。読めない古文書は日本史の先生に頼りつつ、得意である空中写真・地図を活用し、フィールドで地形や地物(石碑、水路、溜池(ためいけ)など)を観察してきた。また、集めた情報を整理して、わかりやすく伝えることを心掛けてきた。

 読者の方も、身近な地域の地理や歴史を調べてみてはどうだろうか。今は、多くの情報が簡単に手に入る。明治時代をはじめ大正・昭和時代の地図は「今昔マップ」、現在の地図や古い空中写真は「国土地理院」のウェブサイトから無料で閲覧できる。古い地図に描かれる川、田、道路に色を付けながら、今の地図と比較してほしい。それにより、今と昔で何が違い、何が同じなのかがわかる。この予習をした後で現地を歩くと、今までとは異なる気づきが得られるはずである。気づいたことを、文字だけでなく、その地点を地図に示すことで、自分の発見を他の方と共有することもできる。また現地に残る遺物は、地域の歴史を目で理解できる大切なものである。それを次世代の担い手である若い人に伝えて、彼らに地域ヘの愛着を深めてもらいたいと思う。

 私自身は、「地歴ウォーク」の良さや面白さを、今後も学生や一般の方に伝えていくことを続けていきたい。これまで、長期出張によるワンオペ育児や、家族旅行中でも石碑に飛びつくなど、妻には苦労と迷惑を掛けてきた。ただ、この生き方は、今後もやめられそうにない。この場を借りて、これまでの感謝を伝えるとともに予(あらかじ)め詫(わ)びておきたい。(広島大大学院准教授=広島市)=おわり

(2022年8月4日朝刊掲載)

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