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被爆ギターの音色 全国へ 西区の石原さん 巡回スタート 世界は今危ない状況 音楽の力伝えたい

 広島市を拠点に活動するクラシックギター奏者の石原圭一郎さん(64)=西区=が、全国を巡回する被爆ギターの演奏会を始めた。4日、東京でリサイタルを開き、原爆の惨禍を乗り越えたギターを広島県外では初めて奏でる。(桑島美帆)

 全国巡回のスタートとして2日夜、東区民文化センターで被爆ギターコンサート「音楽を愛し、平和を希(こいねが)う」を開いた。約60人を前に、スペイン語で「涙」を意味する「ラグリマ」(タレガ作曲)など14曲を心を込めて演奏した。

 1938年ごろに国内で製造されたこのギターは、77年前のあの日、爆心地から約3キロの旭町(現南区)の民家で被爆した。高熱で塗料は溶け、板も反り返って剝がれていたが、約60年後に修復され、美しい音色がよみがえったという。海田町の井上進さん(67)が父親から受け継いでいたのを、石原さんに託した。

 北九州市出身の石原さんは13歳でギターを始め、80年にエリザベト音楽大を卒業後、スペインに7年留学した。2年前に教え子の児童文学作家ささぐちともこさん(61)=西区=が、被爆ギターの由来を下敷きに児童書「ラグリマが聞こえる」(汐文社)を出版したのを機に、広島県内で演奏会を開いてきた。

 「世界は今危ない状況にある。戦争に向かっていた最中に作られたこのギターを通し、音楽が愛されていたことや音楽の力を伝えたい」と語る。6日に大阪市、9日に仙台市で演奏するほか、10月には札幌市を訪れる。

(2022年8月4日朝刊掲載)

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