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[NPT再検討会議2022] 「3対2」対立構図 鮮明 核保有五大国 合意形成に暗雲

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、NPTが核兵器保有の特権を認める米ロ英仏中の五大国が3日までに一般討論演説を終えた。米英仏3カ国はウクライナに侵攻し核兵器使用の示唆をしたロシアを糾弾。ロシアは反論を繰り返し、中国は米英を批判した。五大国が「3対2」で対立する構図が再検討会議の場で鮮明になった。(ニューヨーク発 小林可奈)

 3日、五大国で最後となるフランスの代表が発言した。「はっきり言う。私たちがウクライナで目の当たりにしているのは、威嚇と威圧を用いたロシアの軍事行動だ。これはフランスの言う抑止と違う」とロシアを切り捨てた。

 会議初日の1日に登壇した英国の代表は「核兵器を持たないウクライナに不当な攻撃をしている」とロシアを非難。米国のブリンケン国務長官も、ウクライナ侵攻は、各国に自衛のための核兵器保有を誘発しかねない「最悪のメッセージ」と断じた。

 米英仏3カ国は「無責任で危険な核に関する言及と行動をやめるようロシアに求める」と記した作業文書を7月29日付で提出。8月1日には閣僚声明を出し、「核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならないことを確認する」とした五大国首脳の1月の共同声明の履行をロシアに迫った。

 一方で、ロシアの代表は2日の演説冒頭で、共同声明をなぞるように「核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならないと考える」というプーチン大統領の主張を紹介。各国の批判に対し「全ての主張を強く否定する」と反発した。自国の演説後も「答弁権」を使って反論を繰り返し、「広島と長崎に原爆を投下したのは米国だ」などと米国批判を展開した。

 中国の代表は、オーストラリアへの原子力潜水艦の導入を柱とする米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を挙げて「NPTの目的に反している」と指摘。友好姿勢を取るロシアのウクライナ侵攻には直接触れなかった。

 従来、再検討会議での五大国の協調は、合意形成へ欠かせない要因の一つ。ウクライナ情勢を巡る五大国間の対立が、最終文書の採択を一層難しくするのは必至だ。

記者のつぶやき

場外の議論も面白い

 今月はじめから滞在する米ニューヨーク・マンハッタン島のホテルから歩くこと20分。色とりどりの国旗がはためく国連本部で、7年ぶりに開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議を取材している。ロシア批判などで過熱する議場の外にも思いがけない議論の場が現れ、面白い。

 ロビーに突如、輪をなしたアジアや欧米の若者たち20人。聞けば、10、20代の各国のユース大使たちという。意見を交わすテーマは「地球の持続可能性と核兵器」。核兵器の存在はこの星の未来を脅かす何よりのリスクだというわけだ。

 会議に出席する各国大使は休憩中、サンドイッチを頰張りながら雑談する。来年5月、広島市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)で「核軍縮を進めたい」との話も聞こえてきた。日本での会議取材では感じたことのない自由で寛容な雰囲気が心地よい。(ニューヨーク樋口浩二)

(2022年8月5日朝刊掲載)

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