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露大使【解説】被爆の実態 露と共有を

 広島市の平和記念式典に招かれていないロシアのガルージン駐日大使は、被爆地で自国を「核軍縮のリーダー」と称し、核問題を巡る一方的な主張を発信した。ウクライナ侵攻を巡る核超大国の振る舞いに各国が厳しい視線を注ぐ今だからこそ、原爆の日にロシアの代表と、核兵器使用の惨禍や平和への願いを共有すべきではなかったのか。市の判断に疑問が残る。

 市は当初、例年通りロシアを招待する予定だった。松井一実市長は5月に訪れた欧州連合(EU)のミシェル大統領との面会でも、ロシアのプーチン大統領を式典に招きたい考えを伝えていた。だが、直後に「ロシアに対する日本の姿勢について誤解を招く恐れがある」として、政府と協議して方針転換。外交姿勢と足並みをそろえた。

 松井市長が取り組む「迎える平和」は、核兵器保有国であれ非保有国であれ、為政者に被爆の実態を知ってもらい、国家間の対立を超えて、人としての良心の目覚めに働きかけるのが狙いだ。ロシアの為政者こそ、今、最も迎え入れるべき人物と言える。

 ガルージン氏はこの日、ロシアの核兵器による脅しを「誹謗(ひぼう)中傷」と言い切り、平和記念公園を後にした。市も接点を持とうとしなかった。政治的な舞台に利用されただけならば、怒りしかない。(和多正憲)

(2022年8月5日朝刊掲載)

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