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平和学習バスで賀茂高生が案内 小中生と原爆ドームなど巡る 訪問場所やコース自ら企画

 東広島市の小中学生が広島市中区の平和記念公園などを訪ね、原爆の被害について学ぶ「平和学習バス」で、賀茂高(東広島市)の生徒が初めてガイドを務めた。伝承活動を担ってきた被爆者たちの高齢化が進む中、主催する東広島市原爆被爆資料保存推進協議会が同高と連携して実現した。(岩井美都)

 賀茂高生24人と小中学生46人は7月29日、平和記念公園を訪れた。6班に分かれて約1時間、園内にある原爆の子の像や慰霊碑などを巡った。原爆ドームの近くでは、同高2年奥山愛理さん(16)が「私たちが住む東広島市でもきのこ雲を見たという証言がある」と説明。被爆の前後の原爆ドームの写真を見せると、小中学生は一斉にのぞき込んで見比べた。

 高屋中2年の利重亮太さん(13)は、ビルが林立する現在の原爆ドーム周辺に目をやりながら「これほどの被害があったなんて…」と、写真が伝える惨状に息をのんだ。

 平和学習バスは、市内の全46小中学校の代表の児童生徒が毎年、バスに乗り合わせて平和記念公園などを訪れる取り組み。これまでは原爆資料館のピースボランティアに案内を依頼していた。同協議会は「年齢が近い高校生に案内してもらえば、より印象に残るのではないか」と地元の高校と連携することにした。

 賀茂高は、前身の賀茂高等女学校の生徒が被爆者の救護に当たった歴史があり、手記の朗読などの形で生徒による伝承活動も重ねてきた。救護を体験した元生徒を訪問するなどして教材作りをしている同窓会事務局長の大石秀邦さん(62)を通じ、協議会が生徒によるガイドを依頼。大石さんは「平和を学ぶだけでなく、伝える力の育成にもなる」と後押しした。

 名乗りを上げた生徒たちは、訪問場所やコースを自ら企画。放課後に図書館やインターネットで資料を集め、協議会メンバーの被爆体験伝承者による計6回の学習会にも参加して準備した。2年岡村紗也加さん(16)は「原爆について初めて知ったこともあり、学びが深まった」と振り返る。

 協議会メンバーで伝承者の若山隆英さん(75)=呉市=は「今後も若い力を借りながら、伝承活動の新たな仕組みをつくっていきたい」と話した。

(2022年8月5日朝刊掲載)

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