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クチナシ 無断で伐採 広島壊滅の第一報伝えた故岡さん植樹 広島城本丸 ゆかりの人ら残念がる

 原爆投下後に広島壊滅の第一報を伝えた岡ヨシエさん(2017年に86歳で死去)が犠牲となった仲間の慰霊や平和への願いを込めて被爆翌年に広島城本丸(広島市中区)に植えたというクチナシが、伐採された。市によると、経緯は不明。ゆかりの人たちが残念がっている。

 岡さんの被爆体験を伝えている波多野愛子さん(69)=安芸区=が6月上旬に、高さ1・5メートルあったクチナシが根元付近で切られているのを見つけた。半年前に見た際に異常はなかったという。クチナシのそばに岡さんがともに植えたという高さ約8メートルのエノキは残る。

 岡さんは比治山高等女学校(現比治山女子中・高)3年の時、本丸にあった中国軍管区司令部防空作戦室に動員中に被爆。広島壊滅の一報を電話で福山の部隊に伝えた。波多野さんによると、本丸の南東付近にかつて動員学徒の宿舎があり、級友が原爆で命を奪われたのを忘れないように2本の木を植えたという。

 1953年に国史跡に指定された広島城本丸では樹木の伐採は文化財保護法で規制され、市に申請して許可を得る必要がある。市によると、これまでに申請はなく、いつ誰が切ったのか特定できていないという。

 波多野さんは「岡さんの思いがこもった木。誰かがいきさつを知らずに切ったのだろうがショックだ」と話している。(余村泰樹)

(2022年8月5日朝刊掲載)

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